ジアルジア感染症とその治療について
以前は見つかった動物や、見つかった場所から学名が付けられていました。また、犬のジアルジア、猫のジアルジア、人のジアルジアのそれぞれは形もほとんど同じで、それぞれの動物の間で感染するかどうかも分かっていませんでした。その後遺伝子研究が行われるようになり、遺伝子型を元にしてグループ分けがされるようになりました。その結果、動物に感染していた遺伝子型のジアルジアが、人にも感染することが分かり、現在ではジアルジア感染症は人獣共通感染症(ズーノーシス)に指定されています。人におけるジアルジア感染は、熱帯や亜熱帯の衛生状態がよくない発展途上国の幼児での感染が多いとされています。日本でも、毎年100人前後の発生がみられますが、ほとんどは発展途上国から帰国した人です。
ジアルジアの生活環
ジアルジアには、活動性のある「栄養型虫体」の時期と、抵抗性のある「シスト期」の時期の2つのステージがあります。
腸の中にいるときは栄養型虫体で、十二指腸から空腸にわたって生息しています。腸を移動している途中で、特殊なタンパク質が殻のように栄養型虫体を包み込みます。完全に殻に包まれた状態が、環境抵抗性のシストです。この状態で便とともに体外に排出されます。シストは宿主の口から体内に取り込まれ、小腸の消化液の作用で殻が破れます。そして中から栄養型虫体が出てきます。
この過程を繰り返すのがジアルジアの生活環です。
診断
診断には次の方法があります。
①下痢便から栄養型虫体を検出する
下痢をしている場合は、腸管にいる栄養型虫体がシストになる前に便と一緒に出てきます。糞便検査を行い、顕微鏡で栄養型虫体を見つけることで診断します。ただし、検出率はあまり高くないため、数回糞便検査を行ってようやく栄養型虫体を検出できるということもあります。
②正常な便からシストを検出する
下痢をしていない、もしくは投薬治療をした後では、シストの検出が確定診断になります。シストの検出方法としては、ホルマリン・エーテル法(MGL法)と硫酸亜鉛遠心浮遊法(ZFC)があり、ゴールドスタンダードは硫酸亜鉛遠心浮遊法だと考えられています。
③免疫学的検査を行う
糞便を検査センターに送るか、動物病院で検査キットを使って調べる方法です。
いずれの方法においても、ジアルジアが1回でもいれば「いる」と診断できますが、「いない」ことを証明することはとても難しいため、下痢がなく、複数の検査でジアルジアが検出されなければ「いない」と診断します。
治療
ジアルジアを駆除する内服薬を使用します。
しかしながら、犬や猫のジアルジア駆除薬として認可承認を得ている薬剤は現時点でありません。そのため、獣医師の判断のもと、家畜用の薬などを使用して治療します。使用されている薬は複数あり、それぞれで飲ませる期間も異なります。同じ薬でも、個体差があって効く子となかなか効かない子がいます。これは薬自体の駆除効果が100%ではないことや、ジアルジアの中でも薬が効きにくいものがいること、犬の腸の状態などが原因になります。
食物繊維を積極的に摂ることで、ジアルジアの栄養型虫体が小腸の粘膜に吸着するのを阻害したり、腸内細菌が増えすぎるのを抑える作用が期待できます。プロバイオティクスを投与することでジアルジアの増殖を抑える効果もあると考えられています。
薬を使っても、動物の体内から完全にジアルジアを駆除することは難しいことから、動物の被毛や環境中のシストを取り除くことがジアルジア正常化のためには必要です。環境中にシストが存在していると、薬を飲み終わった5日後にはその動物から再びシストが排泄されるというデータもあります。食糞をする癖があると、シストを摂取して再び感染してしまうため、食糞をやめさせる必要があります。
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