猫のコロナウイルス感染症って?猫伝染性腹膜炎について知りたい!
猫ちゃんは肺炎ではなく腹膜炎に罹患することが多く、致死率がかなり高いため特に保護猫出身猫ちゃんのの飼い主さんには必須の情報です。正しい知識を身につけて、愛猫の健やかな毎日をサポートしましょう。
そんな人間の感染症の世界とは別に、動物の世界にもやはり感染症はあって、その中のひとつに犬や猫のコロナウイルス感染症も含まれます。
「新型コロナウイルスって猫にもうつるの?」
「猫のコロナウイルス感染症ってなに?肺炎じゃないの?」
飼い主さんの心配はつきないものですが、今時点でわかっていることをまとめましたので、心配事やお悩み事解決のために読んでみてください。
コロナウイルスって猫にも感染するの?
今人で話題になっているのはCOVID-19という新型のコロナウイルスです。
人で感染症を起こすヒト-コロナウイルスはこれまでも数種類が知られているように、コロナウイルスは多くの型をもつウイルスなのです。
しかしこれまでに新型コロナウイルスが、犬猫を含むペットに感染したという報告は一切ありません。そのため少なくとも人から猫ちゃんに新型コロナウイルス感染症がうつってしまう心配はかなり小さいと考えられます。 もちろんその可能性は完全には否定できませんが、いまのところあまりにそれを心配されることはないでしょう。
犬や猫にもその種固有のコロナウイルス感染症があります。 コロナウイルスは「種特異性」(形態あるいは機能のうえで,ある種は共通にもっているが,他の種には認められない特色)が高いため、これまで犬猫で報告されている 「コロナウイルス感染症」が、人を含めた他の種の動物に感染したという報告はありません。
犬の場合は軽い下痢症状、猫の場合は伝染性腹膜炎を起こすことが知られています。
猫のコロナウイルス感染症って何?
猫コロナウイルスの一種が原因となる病気は猫伝染性腹膜炎といい、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)により発症します。
一般的な猫のウイルス感染症は、元々病原性を持ったウイルスが猫に感染することで病気を引き起こすというものです。しかし、猫伝染性腹膜炎ウイルスはちょっとその状態が異なります。
さまざまな説が出ている中で最近の有力なものは
「病気を起こす力は弱く、感染してもほとんど症状を示さない、まれにお腹をこわす程度の症状しか示さない猫コロナウイルス(FCoV)が猫の体内で変異をおこして猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)となり、猫伝染性腹膜炎を発症させる」
というものです。
たいていの感染症では、初めから悪いとわかっているいわゆる悪人面したウイルスが犯人なので、見つけやすく分かりやすいのですが、猫伝染性腹膜炎の場合、ごく普通のウイルスがいつの間にか凶悪犯になっているので、診断や治療がやっかいです。
FCoVは猫同士が触れ合うことで容易に感染するため、実は多くの猫はすでにFCoVに感染しています。そのような猫一見元気に見えて実は何かの拍子に猫伝染性腹膜炎を発症するリスクをもっています。
とはいえ、猫コロナウイルスに感染していてもそれが猫伝染性腹膜炎にまで発展するケースは多くはないので、いたずらに怖がる必要はありません。
猫コロナウイルスが猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異する理由はよくわかっていませんが、ストレスを理由に挙げられることもあります。確かにストレスは免疫力を低下させますので、それが変異の理由の一つになるかもしれません。
自由気ままに暮らしているように見えても、猫は猫なりにストレスを感じているのでしょう。
猫の伝染性腹膜炎はどんな症状があるの?
猫が伝染性腹膜炎を発症すると、はじめは発熱、食欲不振、元気がなくなるなどの一般的な風邪のような症状が現れます。
そのままさらに病状が進行すると、お腹や胸に液体が溜まったり(ウエットタイプといいます)、肝臓や腎臓などの臓器に肉芽腫という塊を生じたりします(ドライタイプといいます)。一匹の猫がウエットタイプ、ドライタイプの両方の症状を示すこともあり、最終的に多数の臓器や神経が不調となり、死に至ります。
猫の伝染性腹膜炎はどんな治療をするの?
猫伝染性腹膜炎は、根本的な治療がなく、全身状態が悪化すれば致死的な感染症です。しかも、予防薬であるワクチンがありません。一部海外ではワクチンが販売されていますが、その効果は十分なものではないという見解があります。
通常の検査方法では猫コロナウイルスと猫伝染性腹膜炎ウイルスを区別することがなかなかできず、猫伝染性腹膜炎の診断もまた困難です。血液検査の結果に加え、臨床症状や血液性状などの様々な状況証拠から推定することになります。
猫伝染性腹膜炎ウェットタイプ:急激に貯まる腹水を改善させ、血管炎をおさえるための利尿剤や血小板に関わる薬、そしてステロイドホルモン剤が使われます。
ドライタイプ:インターフェロン製剤を中心とした対症療法を行います。
猫の伝染性腹膜炎は治るの?
決定的な治療法が確立されていませんが、猫伝染性腹膜炎を発症してしまったら、その症状に応じて、抗生物質、副腎皮質ホルモン製剤(コルチコステロイド)やインターフェロン製剤などで延命を図ることが主流となっています。
残念ながら、治ることはほとんどありません。
もし愛猫が伝染性腹膜炎を発症してしまった場合、そして他に同居の猫ちゃんがいた場合、コロナウイルス自体は環境中で急速に感染症を広げるような強いウイルスではないため、ウイルスを広げない習慣を身に付けることが予防に有効です。
猫の眼・鼻・口などに触れるときには、事後だけでなく事前にも手をよく洗いましょう。
HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1といったヒト-コロナウイルスについては、手など皮膚の消毒には、消毒用アルコール(70%)が有効だと考えられています。また、一般の場所で、モノの表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)が有効だと考えられています。
どちらも効果はありますが刺激も強いため、猫の安全を考え、管理は適切に行いましょう
<おすすめ動画>
<関連記事>
犬と猫の低血糖に注意!!新しく家族として迎えた子犬や子猫。よく遊び、よく食べ、よく寝て、どこを切り取っても可愛いですよね。 急に遊びだしたと思ったらすぐに眠くなったり、本当に忙しい生き物です。 しかし体調が悪くなってしまう時もあります。突然元気がなくなったり吐いたり、震えたり、、、。どうすれば!? もしかしたらその症状低血糖が原因かもしれません! そこで今回は子犬や子猫で起こりがちな“低血糖”について解説していきたいと思います。
<関連記事>
間葉系幹細胞療法について近年、再生医療が人においても注目を集めていますが獣医療においても目覚ましい進歩を遂げています。 自分自身の細胞を用いて、損傷した組織を修復する幹細胞療法について今回はご紹介して行きます。
<関連記事>