尿検査の重要性と尿の採り方
尿検査ではどんな病気が分かるの?
まずは腎臓や泌尿器の病気です。腎不全や、尿路の炎症・腫瘍が見つかることがあります。
それ以外の病気では、代謝の結果として尿に変化が出ることがあるため、糖尿病や門脈シャント、肝不全といった全身の代謝性の病気が見つかることがあります。
動物病院では尿の何を調べているの?
まずはにおいや見た目を確認します。変なにおいがしないか、色はおかしくないか、混濁や異常な沈殿物はないか、などです。これを官能検査と呼びます。変なにおいがあると感染を疑います。尿が赤ければ血尿の可能性が高くなります。混濁があると、尿中に細胞や細菌、結晶などさまざまな成分が混ざっている可能性があります。これだけでは確定診断にはなりませんが、その後に行う検査の結果を予測することができます。
次に尿比重や化学的性状検査を行います。尿比重は腎臓の機能を確認するための検査です。腎臓は血液から尿を作り出す臓器です。血液検査よりも尿検査の方が腎臓の機能低下を早期に発見することができます。尿比重は腎臓の尿を濃縮する機能を調べる検査ですが、その日によって、時間帯によって変化する可能性があるため、タイミングを変えて複数回の結果から判断する必要があります。
化学的性状検査はpH、尿タンパク、尿糖、ケトン体、潜血、ビリルビンといった項目を確認します。
pHは尿の酸性・アルカリ性を示すもので、犬や猫の尿は弱酸性が正常です。食事内容によって、または細菌性膀胱炎になるとアルカリ性になることがあります。尿がアルカリ性になるとストラバイトという結石の成分が析出してきます。ストラバイトは尿が酸性になると溶けるため、抗生物質で細菌性膀胱炎を治療したり、療法食を使用してpHを下げるようなケアをします。
尿タンパクは正常でも多少は尿中に出てきますが、腎臓に異常があるとその量が増えます。
尿糖は正常ではみられませんが、血糖値が高くなると出てきます。血糖値とあわせて評価する必要がありますが、持続して尿糖が出るようであれば糖尿病が疑われます。
ケトン体も正常ではみられませんが、脂肪を過剰に燃焼している状態が続くと尿中に出てきます。主に糖尿病の合併症である糖尿病性ケトアシドーシスになっているかどうかを確認するための項目です。
潜血も正常ではみられませんが、泌尿器系の出血、体内での溶血、筋肉の損傷があると陽性になります。
ビリルビンは赤血球が代謝されたもので、ビリルビンが出ていると黄疸がみられます。犬では正常でも多少は尿中に出てくることがありますが、猫ではビリルビンが出ていれば必ず異常です。
そして、顕微鏡による細胞や結石の成分となる結晶などの確認をします。
尿の採取方法
尿の採取方法には、いつも通りした尿を採る自然排尿、お腹から手で膀胱を圧迫する圧迫排尿、外陰部からカテーテルを膀胱まで入れるカテーテル採尿、膀胱に直接針をさす膀胱穿刺があります。
ご家族が尿を採取する場合は自然排尿になります。犬と猫それぞれの尿の採り方は後述しますが、病院に尿を持参する場合には重要なことがあります。まず、尿は液体の状態で持参する必要があるということです。ペットシーツに染み込んだ尿では検査ができません。また、排尿してから時間が経つと尿の性状はどんどん変化していきます。そのため、可能な限り新鮮な尿を持参してください。もし時間がかかる場合は冷蔵しておきましょう。尿の変化を遅らせることができます。また、獣医師にどのくらい前に採取した尿か聞かれるので、時間は確認しておきましょう。
犬の尿の採り方
室内で排尿する子であれば、ペットシーツを裏返しにして吸水しない方を表にします。そこで排尿させ、溜まった尿を採取します。シーツの感触が変わって排尿しなくなるようであれば、いつも通り排尿している時に直接容器に受けたり、尿検査用スポンジ(動物病院でもらってください)で採取します。
屋外で排尿する子であれば、直接容器に受けるか尿検査用スポンジの使用をおすすめします。地面についた尿にはゴミが混入する可能性が高くなります。
猫の尿の採り方
猫は犬に比べて尿の採取が圧倒的に難しいです。犬でも神経質な子は尿を採ろうとすると気にして我慢してしまいますが、猫はその傾向が顕著です。また、多くの猫が猫砂が入ったトイレを使用していますが、猫砂を除いてしまうと排尿しなくなる子もいます。
そこでおすすめしたい方法は「システムトイレに変更する」というものです。システムトイレは2段になっていて、尿が下の段に落ちる構造をしています。通常はそこにシーツを敷いておきますが、シーツを除けば簡単に尿を採ることができます。猫にとってもいつも通り排尿をするだけなのでストレスがありません。ただし、トイレ自体を変更すると慣れるまでに時間がかかることもあるため、最初からシステムトイレにするか、普段から少しずつ慣れさせておくのがポイントです。
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