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猫の肝リピドーシスについて

獣医師
高木俊輔
[記事公開日]  [最終更新日]
太っていた猫が急に食べなくなってしまうと、肝リピドーシスのリスクが高くなります。白眼や歯茎などが黄色くなる「黄疸」が出たり、痩せてしまうことで病院に連れてこられることが多いです。病状が進んでけいれんを起こしたり意識がなくなった状態で来院されることもあります。血液検査や画像検査、針生検で診断をして、入院により点滴や栄養補給の集中治療を行います。回復する猫も多いですが、治療開始後に亡くなってしまうこともある病気です。

肝リピドーシスになるような何らかの基礎疾患を持っている猫が多いため、肝リピドーシスと診断された場合、基礎疾患の診断や治療も同時に行う必要があります。

今回は肝リピドーシスについて、病気の概要、症状、診断方法、治療法について解説します。
[ 目次 ]
猫の肝リピドーシスについて
ある猫のお話です。その子はもともと食欲旺盛で肥満ぎみの体型でした。慢性胃腸炎があるためたまに嘔吐をしていましたが、薬で嘔吐のコントロールはできていました。しかし、引越しのため長時間の移動や環境が変化したことによるストレスで数日前から嘔吐が始まり、まったくご飯を食べなくなってしまったそうです。すると、急に痩せてしまいどんどん元気がなくなり、なんだか耳の裏や歯茎が黄色っぽい気がするとのこと。

これが典型的な肝リピドーシスの特徴です。太っていなくても肝リピドーシスになる猫もいますし、症状が少し違うタイプもあります。しかし、いずれにしても自然回復は難しく、早期に治療をしなければ命に関わる病気であることには変わりません。

どんな病気?

猫の肝リピドーシスは、肝臓の細胞に脂肪が重度に蓄積してしまい、肝臓の中で胆汁が溜まり肝臓の機能障害が起こる病気です。簡単に言うと、脂肪肝の状態になってしまうのです。なぜ肝リピドーシスになるのか、詳しいことはまだ完全には分かっていません。現在分かっていることは、何らかの基礎疾患や環境変化のストレスなどによって食欲がなくなってしまうことでタンパク質が不足し、その代わりに体内にある脂肪が分解されるのですが、肝臓が処理できる量を超えて蓄積してしまうことで肝リピドーシスになるということです。

肝リピドーシスの基礎疾患としては、膵炎・腸炎・胆管炎という3つの臓器の炎症である三臓器炎が多いという報告があります。

症状は?

ストレスが原因で食べなくなった場合は、数日して元気がなくなり、どんどん痩せてしまい体重が減少します。その後よだれが出たり、白眼や歯茎、皮膚、粘膜が黄色くなる黄疸が出ます。

膵炎や胃腸炎、胆管炎といった基礎疾患がある場合は、それらの症状によって嘔吐や下痢がみられ、食欲がなくなってきます。

状態が悪化すると、けいれんが出たり意識障害に陥ることもあります。

病状が進んで治療に入るのが遅れると命に関わるため、できるだけ早期に発見して治療を開始する必要があります。

どんな猫がかかりやすい?

中年齢の太っている猫で多い病気だとされているため特に注意が必要ですが、太っていなくても肝リピドーシスになる猫はいます。性別や品種による差はありません。

診断は?

まずは症状から肝リピドーシスを疑います。動物病院で行う診断のための検査としては、血液検査、超音波検査、肝臓の針生検があります。

血液検査では肝酵素が上昇したり、黄疸やアンモニアの上昇がみられることがあります。超音波検査では脂肪肝の特徴がみられることがあります。針生検は基本的に麻酔は必要なく、お腹の外から肝臓に針を刺して細胞を採取します。肝臓の細胞が膨らみ、中に脂肪が含まれている所見が出れば、この病気の疑いが強くなります。

確定診断のためには全身麻酔をかけて肝臓の組織生検(ある程度の塊を切除する)を行うことが必要ですが、実際には肝リピドーシスの猫はかなり状態が悪いことも多く、ここまでは行わずに仮診断を下して治療に入るケースが多いようです。

治療は?

入院しての集中治療が必要です。

とはいえ、実際に治療の中心になるのは、十分な栄養を猫に与え続けるということです。ここで言う栄養とはタンパク質のことです。タンパク質を補給し続けることで、肝臓に溜まってしまった脂肪を減らして、肝臓の機能を回復させていくのです。

しかし実際には嘔吐があってなかなか食べられなかったり、血液のバランスも崩れていることがあるためにさまざまな補助治療が必要になります。点滴をして体のミネラルバランスを整えたり、制吐剤を投与したりといった治療です。特にやっかいなのが嘔吐です。食べさせることが重要ですが、嘔吐がコントロールできないと栄養を体に入れることができません。

もともと食欲がなくなっている状態で治療を始めるため、口から食べさせることが難しいケースも多く、まずは鼻からチューブを入れてそこから栄養を投与します。使用する栄養は、主にチューブから与えやすい流動食を用います。

状態がそこまで悪くない場合は、全身麻酔をかけて食道瘻チューブや胃瘻チューブを付けることもあります。これらは鼻から入れるよりも太いチューブを設置することができるため、栄養補給が簡単というメリットがあります。また、鼻からのチューブは吐いたりくしゃみをすることで抜けてしまうことがありますが、食道瘻チューブや胃瘻チューブは自然に抜けることはないというメリットもあります。

肝リピドーシスを発症する引き金になるような基礎疾患が分かっている場合は、その治療もあわせて行います。

飼い主さんに知っておいてもらいたいこと

体調が悪くなり食欲がなくなると肝リピドーシスになってしまう危険が高くなります。そのため、状況がどうあれ、数日に渡って食欲不振が続いているようなら一度病院で診察を受けるようにしましょう。

一度肝リピドーシスになってしまうと、治療は可能な限り急ぐ必要があります。治療しないとほとんどの場合は助かりません。また、必要な治療を行っても治療開始してすぐに亡くなってしまうこともあります。

しかし、初期の合併症を乗り越えれば助けることができる病気でもあります。

特効薬はないため、辛抱強く栄養補給をする必要があります。治療は場合によっては数ヶ月かかることもあり、その場合は自宅での栄養補給を飼い主さんに頑張ってもらうことになります。もしお家の猫が肝リピドーシスになってしまったら、かかりつけの獣医師と十分に相談して治療を乗り切ってください。

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