愛猫の呼吸が苦しそう・・・猫喘息について知りましょう
もともとその原因や病態はわかっていないことがまだまだありますが、花粉やハウスダストマイトのような微粒子を吸い込んでしまうことが病気を悪化させることは知られています。
そんな春を憂鬱にしてしまう喘息ですが、じつは猫ちゃんにもあることをご存知ですか?
しかも猫ちゃんの喘息は急に発症することが多く、緊急疾患として扱われる怖い病気なのです。
「うちのこ元気だから~」とばかり思わず、ぜひ愛猫ちゃんのために正しい知識を身につけてくださいね。
何らかの原因によって、空気の通り道である気道が炎症を起こしてしまい狭くなることで、呼吸に問題をおこす、とても苦しく辛い病気です。
少し古いデータでは日本人の成人の約5%がかかっている、けっしてまれではない病気です。これを読んでいただいている方の中にもいらっしゃるかもしれませんね(20人に1人の割合ですから)。
そんな喘息の原因にひとつとして知られているのが「室内飼育動物」。犬やハムスターなどももちろんですが、とくに注意とされているのが猫です。医学的立場からすると「絶対に!」喘息の患者さんは猫ちゃんを同じ部屋で飼わないことがすすめられます。
しかし、そんな猫ちゃんそのものにも喘息があるのです。
しかも、猫ちゃんの喘息は急性に起こることが多く、突然咳き込んでそのままゼイゼイ、呼吸困難に陥ってしまうこともあるかなり怖い病気です。
ちょっと長いですが、ぜひ正しい知識を身につけて愛猫ちゃんを守ってあげてください
猫喘息ってどんな病気?
猫喘息は、人の喘息と同じようにまだわかっていないことが多い、空気の通り道、気道の病気です。
原因は特定されていませんが、ハウスダスト、花粉、タバコの煙、強すぎる芳香剤(消臭スプレー、柔軟剤、掃除クリーナー、制汗剤やヘアスプレーなど)などの吸入の刺激が、ウイルスや細菌、マイコプラズマや寄生虫といった病原体の感染を悪化させることで発病を促すと考えられています。
そのような原因によって、気道が炎症をおこし、周りの筋肉がぎゅーっと縮まり、粘膜が腫れてしまうことで息がしづらくなってしまします。
比較的若い猫からミドル世代に見られ、MIXを含めすべてのす種類の猫にみられます(シャム猫系に多いという報告もあります)。
適切な治療を受けることで落ち着きますが、何度も繰り返したり炎症を抑え込めないと、肺の柔軟性がなくなり最終的には肺の一部が機能しなくなる「無気肺」となってしまうこともあり、寿命を縮めてしまうことにつながります。
猫喘息ってどうやって診断するの?
【一般的な症状】
咳、ゼイゼイする苦しそうな呼吸(喘鳴 ぜいめい)、息がしづらく口を開けて上を向き苦しそうな様子(呼吸困難)
こういった症状が一時ではなく連続してみられる、収まったと思ったら繰り返すようなときは要注意です。
【病院で行われる検査】
①視診:呼吸状態を観察し、息を吸っているとき吐いているときの間隔や喘鳴の状態、また喉から首を触って痛みや呼吸状態の変化を確認します。
②聴診:呼吸器疾患の基本です。肺に異常が出ていないか、心臓の病気と区別するためにも重要です。
③レントゲン:胸を中心にX線撮影を行い、肺や気管支、心臓やその他の異常を確認します。
④レコー:超音波を胸部に当てて、心臓の動きや肺の状態、そして胸に水や膿がたまっていないかを確認します。
これらの検査を行い、気道内に異物がつまっていないか、寄生虫症になっていないか、心臓や胸のその他の異常がないかを除外していき、最終的に「猫喘息」と診断されます。
必要であると判断された場合は、全身麻酔下で気道内を洗浄し細胞をとってしらべる気管支肺胞洗浄検査 BAL が行われることもあります。
猫喘息ってどうやって治療するの?
【緊急(急性)】
なにはともあれ呼吸困難の状態を改善しなければ死んでしまうので、酸素を吸入します。
濃度の高い酸素を吸わせることで体の細胞への酸素の供給が改善し、苦しさからの興奮が少しずつ改善されます。そのタイミングで、気管支の拡張薬や各種ステロイドを炎症改善のために投与します。
人では一般的な治療薬の吸入は、ただでさえ来院回数の少ない猫にとってはなかなか受け入れてくれないことが多く、かえって暴れてしまうことで状態が悪くなる可能性があるため、猫のキャラクターによっては選択されません。
【慢性】
そこまで緊急性がないような軽症、または緊急時から改善があった場合は、喘息の発作の起こる回数(頻度 ひんど)を減らす、発作の状態を軽くするための治療が行われます。
①原因の除去:先述したように、花粉やハウスダスト、タバコや強すぎる芳香剤は刺激となることが多いため、飼い主さんにできる限り取り除く努力をお願いします。
具体的には、こまめな掃除、カーテンやカーペット、ぬいぐるみやブランケットなどの布製品の除去、猫がいる場所での禁煙、芳香剤の使用を控えるなどです。
②薬物治療
緊急時に使用してものと同系統の、気管支拡張剤やステロイドを症状に合わせて量を加減して使用します。
副作用が強いなどなんらかの理由で続けられない場合やあまり改善が見られない場合は、免疫抑制剤や抗生物質を使用することもあります。
猫喘息って治るの?
一時的な炎症や環境の悪化によるものだった場合は完治が期待できます。
しかし、病気が長期化していたり、炎症が重症で肺の機能に問題が起こってしまった場合は再発の恐れがあり、治るとはいえません。
その一方で、こまめなアレルゲンの除去、適切な体重コントロール、規則正しい生活や遊びの習慣、おだやかな生活(猫ちゃんはこれが一番難しいですね!)を継続することで、命の危険につながるような大きな発作は防ぐことができます。
安定しているとついつい忘れがち、また猫ちゃんにありがちな投薬の拒否などで決められた薬を飲んだり飲まなかったりすることで、症状のコントロールが難しくなってしまうことがあります。
全くの投薬ゼロで生活する、完全な治療終了は難しいのが現状ですが、その猫ちゃんごとにあった方法で治療が可能な病気でもあります。どうしても薬が与えられない、病院に連れていけないなぢお悩みの飼い主さんはあきらめてしまうのではなくぜひ動物病院にご相談してください。
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