猫のリンパ腫って何?正しい知識と立ち向かい方を解説‼
一般的に腫瘍と聞くと怖ろしいイメージがありますが、リンパ腫はどうなのでしょうか。
本記事では、猫のリンパ腫における症状、診断、治療、予後を紹介します。
最後まで読んで頂き、猫のリンパ腫に対する正しい知識を身につけていきましょう。
リンパ腫が発生しやすい猫種
リンパ腫は、猫で最も好発する腫瘍の一つです。
猫種では、シャム猫が好発種と言われています。
一般的には老齢の猫での発生が多いですが、猫免疫不全ウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫では若齢での発生が多くなっています。
また、受動喫煙に暴露されている猫では、暴露されていない猫に比べてリンパ腫の発生率は2.4倍と言われています。
猫のリンパ腫の分類と症状
リンパ球は体の様々な部位に存在しています。
よってリンパ腫も猫の体の様々な部位に発生し、その症状も多岐にわたります。
リンパ腫は発生部位によって以下のように分類されます。
・消化器型リンパ腫
腸管に限局するか、腸管と腸間膜リンパ節、肝臓へ浸潤するリンパ腫です。
FeLV陰性の老齢猫で発生しやすく、症状は嘔吐や下痢、血便、腹部膨満などが見られます。また、食物や水分の摂取が十分でないために、削痩や脱水も見られます。
・縦隔型リンパ腫
FeLV陽性の若齢猫での発生が多く、胸骨リンパ節、胸腺を含む縦隔部のリンパ腫です。
胸腔内の腫瘤による圧迫や胸水の貯留のため、呼吸困難や嚥下困難が発生します。
・多中心型リンパ腫
犬のように体表リンパ節が腫大することは稀で、胸腺、脾臓、肝臓、消化管などに多発性に病変が認められます。
肝臓に病変が発生した場合には、肝機能不全により黄疸が見られることがあります。
・腎臓型リンパ腫
中高齢の猫に発生すると言われ、腎臓の著しい腫大が認められます。
腎機能不全のため、多飲多尿や尿毒症が見られます。
・鼻腔内リンパ腫
FeLV陰性の老齢猫で発生しやすく、鼻腔および副鼻腔に見られます。
鼻腔内の腫瘍のため、鼻づまりや鼻出血、呼吸困難が認められます。
・中枢神経系のリンパ腫
原発性または腎臓からの続発性に、脳や脊髄に見られます。
症状は発作、痙攣、四肢の不全麻痺などが認められます。
・皮膚型
皮膚の硬化や強い痒み、脱毛などが見られます。
猫のリンパ腫の診断
様々な検査から、多角的なアプローチを行います。
・血液検査
リンパ腫では約1/3の症例で貧血が認められます。
また、腫瘍が骨髄に浸潤している場合は血小板の減少や、リンパ芽球様細胞の出現が見られることもあります。
・画像検査
猫に多いとされる消化器型リンパ腫の診断のためにX線検査や超音波検査は必須となります。
消化管の腫大、腎臓の腫大、胸水や腹水の貯留などを検出します。
・ウイルス検査
FIVやFeLV感染の有無はリンパ腫の発生に大きく関わっています。
・細胞診
画像検査で臓器の腫大などが認められたら、そこに注射針を刺して細胞を採取します。
また、胸水や腹水が貯留している場合は、貯留液中に腫瘍細胞が出現していないか確認します。
・病理組織学的検査
細胞診でリンパ腫の診断ができないときに行うことが多く、病変部を外科的に切除して組織を確認します。
猫のリンパ腫の治療
病変が一部のリンパ節や臓器に限局している場合は外科手術や放射線治療単独で治療が行われることもあります。しかし多くの場合、リンパ腫は全身に広がっており、また抗悪性腫瘍薬によく反応するため、治療には化学療法が必要となることが多くなっています。
・多剤併用療法
腫瘍に対する作用機序の異なる複数の抗腫瘍薬を用いることで、抗腫瘍作用の相乗効果を得ると同時に副作用を最小限に抑えることを目的としています。
また複数の薬剤を使用することで、腫瘍細胞がそれぞれの薬剤への耐性を持つことを抑える働きもあります。
・単剤療法
一部の皮膚型リンパ腫や、再発したリンパ腫には一種類の抗腫瘍薬による治療を行うこともあります。
これらの化学療法においては副作用が起こる可能性があることも忘れてはなりません。
骨髄抑制を起こす薬剤を用いる場合は、薬剤投与前に血液検査にて白血球の数を確認する必要があります。
また副作用の発見を速くするため、自宅での体調の変化もしっかり確認しましょう。
猫のリンパ腫の予後
猫のリンパ腫の予後は一般に、多剤併用化学療法を実施した場合、完全寛解率は50~70%、生存期間は約7ヵ月と言われています。
しかし細かく見ると、病変が発生した部位やFIVおよびFeLV感染の有無、臨床症状の有無によって予後は大きく異なってきます。
以下は病変の発生部位別における生存期間中央値です。
・消化器:7~10ヵ月
・胸腺 :2~3ヵ月
・腎臓 :3~6ヵ月
・神経系:2~3ヵ月
・鼻 :18ヵ月(放射線療法を使用した場合)
そんな中で30~35%の症例が1年以上生存するというデータもあります。
かかりつけの獣医師としっかり相談をしながら、治療方針についてよく考えてみてください。
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