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猫のけいれん発作に飼い主さんが注意すべきこと

キャットケアスペシャリスト
増田暢子
[記事公開日]  [最終更新日]
けいれん発作を起こす病気の代表例はてんかんですが、けいれん発作を起こす病気は他にもあります。実際に愛猫がけいれん発作を起こす姿を見ると、大抵の飼い主さんはパニックを起こすでしょう。けいれん発作の事前知識で、万が一の時にも冷静に対応できるようになりましょう。
[ 目次 ]
猫のけいれん発作に飼い主さんが注意すべきこと

ある日突然、愛猫がけいれん発作を起こした!

我が家で一緒に暮らしていた愛猫は、全身がけいれんする発作を起こし、それをきっかけに2度の闘病を行いました。1度目は11歳の時で、年齢的に心配でしたがMRIと脳脊髄液の検査も受け「特発性てんかん」と診断され、数年にわたって投薬治療を行いました。全身がけいれんする発作はなくなり、顔や体の一部がけいれんする焦点発作(部分発作)を時々起こすようになったため、獣医師と一緒に計画的に薬の量を減らしていき、最終的には発作がなくなって薬を切るところまでいきました。

安心して暮らせるようになって数年後、17歳で再び全身けいれん発作を起こしました。てんかんの再発かと思いましたが、今度の診断は「進行性脳疾患」でした。すでに高齢になっていたためMRIは受けさせませんでしたので、確定診断には至りませんでした。しかし、神経科の専門医からは「おそらく脳腫瘍だと思います」と言われました。その頃は慢性腎不全も患っていましたので、慢性腎不全を診てくださっていた獣医師と神経の専門医にタッグを組んで頂き、薬の種類や量などを調整して頂きました。

この全身けいれん発作をきっかけにした2度の闘病生活の体験で学んだ知識を基に、飼い猫がけいれん発作を起こした場合に飼い主さんが注意すべき点や、獣医師にどういった観点の報告をすると良いかなどについて、ご説明します。猫のてんかん発生率は100頭に1頭以下だと言われていますが、全身けいれんの発作はてんかん以外の病気でも起こります。実際に目にすると決して冷静ではいられませんが、いざと言うときに少しでも冷静になれるよう、一読して頂ければと思います。

初めてのけいれん発作

初めてけいれん発作を起こした愛猫を見て、平気でいられる飼い主さんはいないと思います。それでも、その時の状況を出来る限り詳しく獣医師に伝えることが、早く原因を究明するための助けになります。

全身を硬直させたり激しくけいれんしている愛猫を目の前にすると、飼い主さんは真っ先に「どうにかしてあげたい」という気持ちになると思います。しかし、「舌を噛んでしまうのではないか」などと考えて口を押さえようなどとはしないでください。全身のけいれん発作を起こしている最中、猫に意識はありません。そのため、物凄い力で噛まれることになりかねませんので、発作中の猫には触らないようにしましょう。

また発作中の猫は、とても猫だとは思えないような姿勢とスピードで一直線に移動する場合があります。我が家の愛猫も、引っかかっていた爪が絨毯から外れた途端に、滑るように一直線に進み、食器棚にぶつかったということがありました。また、一緒に布団で寝ていたら突然発作を起こし、私の目の前で、直立二足歩行で駆け出していくかのように布団を飛び出し、その先にあった椅子の肘掛に引っかかって止まったこともありました。

このように、発作中の猫は思わぬ動きをすることがありますので、猫自身に触るのではなく、周囲にある障害物を排除してあげることが大切です。その際、大抵は一直線に動くので、先回りをして障害となる物をどかしてあげてください。

発作後の猫は、おそらく数分間はぼーっとした状態でいると思います。よだれを垂らしていたり、失禁してしまう場合もありますが、しばらくはあまり刺激しないようにして、意識が戻るまで待ってあげましょう。

一番肝心なのが、発作が起きていた時間や発作中およびその前後の様子です。獣医師になるべく細かく説明できるように、下記の観点で気づいたことをメモに残しておくと良いです。

1. 発作時間
正確な時間が分からない場合も、数十秒単位か数分単位かは言えるようにしましょう。
通常、全身けいれんの発作は長くても5分程度でおさまります。逆に、発作が5分以上続く場合はかなり重篤な状態だと言えます。初めての発作を目にすると、飼い主さんはパニックになりとても長い時間が経過したように感じるでしょうが、5分以内か否かは大きな違いなので、発作に気づいた時間とおさまった時間はメモに残すようにしましょう。

2. 発作前の様子
机から落ちて頭をぶつけた後にけいれんが始まった、突然意識を失ってけいれん発作になり机から落ちた、発作を起こす◯分前に何かを食べていた、ギャッと鳴いたと思ったらけいれん発作が始まった等

3. 発作中の様子
見たままをなるべく詳しく。可能なら動画撮影しそれを見せられると良いです。

4. 発作後の様子
一旦おさまり◯分間ボーッとした後元に戻った、発作後◯時間後に再びけいれんが始まった、発作後◯分程度大きな声で鳴いていた、発作後も◯分間はふらついてうまく歩けなかった等

けいれん発作の種類

けいれん発作というと、前述のように意識を失い、全身を硬直させたり四肢をバタバタさせたりするような発作をイメージされる方が多いでしょう。しかし、このような全身性の発作だけがけいれん発作ではありません。

焦点発作と言って、体の一部だけがけいれんする発作もあります。焦点発作には、顔面がけいれんする、瞳孔(黒眼の部分)が丸く広がった状態になる、顔の片側がけいれんして口をくちゃくちゃさせてよだれ(泡)を出す、手足の一部がけいれんする等のさまざまな症状があります。体の震えや過度の運動で疲労した筋肉がピクピクするのと混同しないようにしましょう。

全身発作の場合は猫は意識を失っていますが、焦点発作の場合は意識状況もさまざまです。発作中の猫に声をかけて視線や耳が飼い主さんを意識しているかどうかを確認し、発作中の意識の有無を獣医師に伝えることも大切です。

けいれん発作を起こす原因となる主な病気

けいれん発作を起こす病気と言って誰もが思い浮かべるのは「てんかん」でしょう。しかし、けいれん発作を起こす病気は、てんかん以外にもたくさんあります。脳の病気だと脳炎、脳腫瘍や水頭症、先天的な脳の病気(奇形)などでしょう。脳以外の病気だと、内臓の病気に由来した低血糖などの代謝異常や免疫異常に由来した炎症性の病気、脳梗塞などの血管の病気や事故などで脊髄を損傷するなどの外傷性のものなどです。また、誤食による中毒症状もあります。

残念ながら、けいれん発作を起こす病気を究明するためには、いろいろな検査をすることによって上記の候補となり得る病気ではないことを一つ一つ確認していくしかありません。可能性のある病気が全て否定されると、「特発性てんかん」という診断を受けることになります。

これらの検査の過程で、MRI検査や脳脊髄液の検査が必要となります。これらの検査は、全身麻酔を必要とするため、高齢の猫にはリスクが高くなります。発症した猫が高齢の場合は、全身麻酔のリスクを冒してまで検査をする必要はないという考え方もあります。

最近は、神経科の専門医がいる動物病院もあります。神経科の獣医師は、問診と観察、そして神経学的検査を行うことで、病名までは特定できなくても、「どこ」で「何」が起こっているのかを突き止めることができます。そうすれば、病名が特定できなくても適切な対処をしてもらえるからです。

けいれん発作を起こす愛猫への対応と注意点

けいれん発作を起こす前に挙動不審になるとかグルーミングを過剰に行うなどの、なんらかの前触れが現れる場合もあるようですが、大抵の場合、発作は突然起きてしまいます。そのため、けいれん発作を起こす愛猫と一緒に暮らしている飼い主さんは、下記の点に注意した方が良いでしょう。

1. 留守番など、猫だけにする時は高いところに上がれないようにする

2. 床の上にはなるべく障害となるものを置かないようにする

3. 発作の誘因がないか観察する
光や音などの刺激や気圧の変化が発作の誘因になる場合があります。発作の記録をつけることで誘因が分かり、ある程度の対策が可能となる場合もあります。我が家の場合、「特発性てんかん」の時は目覚まし時計の使用をやめました。「脳腫瘍」の時は気圧の低下により発作が増える傾向がありましたので、投薬量調整の目安にしていました。

4. 歩き方や行動の異常などについて注意深く観察する
進行性の病気の場合、けいれん発作だけではなく種々の神経症状も徐々に進行していきます。普段から歩き方、食べ方の変化や左右の瞳孔の大きさに差があるか等を観察し、通院の都度獣医師に報告するようにしていました。

根気よく治療を続けよう

特発性てんかんの場合、基本的には生涯薬を飲み続けることで、発作をうまくコントロールしながら愛猫に通常の生活をさせてあげることができます。しかし、普段薬で発作を抑えているため、再び発作が起こる時は、反動で非常に激しい発作になることが多いようです。絶対に薬を飲ませ忘れることのないように、根気よく治療を続けていきましょう。

我が家の愛猫もそうでしたが、発作の頻度や状態をよく観察し、獣医師と相談しながら投薬量を少しづつ減らしていくことで、最終的には薬を止めることが可能なケースもあります。薬を切りたい場合はその旨を獣医師に話し、相談をしながら本当に時間をかけて、少しずつ少しずつ減らしていくことが大切です。

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