犬・猫の天疱瘡ってどんな病気?症状や治療について徹底解説します!
本記事では、天疱瘡の症状や診断、治療についてお話したいと思います。
犬・猫の天疱瘡の症状
①落葉状天疱瘡
皮膚に膿疱(水疱の内容物が粘性の強い膿)、痂皮(傷の表面から染み出てくる液体が乾いたもの)、びらん(ただれ)ができます。そこに細菌が感染したりすると、赤み、脱毛などが見られます。全身かさぶただらけ、カサカサしているような状態に近いです。鼻の頭や耳介(耳たぶ)、眼の周り、肉球に限局することもあれば、全身に波及することもあります。鼻の頭に病変ができた場合は、色素がなくなってしまうことも多いです。痒みの程度は様々で、悪化と改善を繰り返します。肉球の角化亢進はよく見られる症状で、病変が肉球だけに限局することもあります。
年齢、性別、品種を問わず発症しますが、秋田犬、チャウ・チャウが好発品種です。天疱瘡という病気の中で、この落葉状天疱瘡が最も多く見られます。
②紅斑性天疱瘡
落葉状天疱瘡の軽症型、あるいは天疱瘡とエリテマトーデス(過剰な免疫により自身を攻撃することによって全身に症状が出る疾患)の交差型と考えられています。
典型的な症状は、鼻の頭、耳介、眼の周囲に見られる、びらん、鱗屑(角質が小板状に剥離したもの)、痂皮で、落葉状天疱瘡とは違い、膿疱は確認できないことが多いです。また、口の中に病変はできないことも特徴になります。顔に限局する軽症の落葉状天疱瘡というイメージです。犬ではよく見られますが、猫では稀な疾患です。ジャーマン・シェパード・ドッグ、コリー・シェットランド・シープドッグに多く発症します。
③粘膜類天疱瘡
耳介の内側、鼻、結膜、唇、口の中、生殖器、肛門に水疱、びらん、潰瘍が見られます。落葉状天疱瘡や紅斑性天疱瘡とは違い、毛が生えている所に加え、粘膜や皮膚と粘膜の間(皮膚粘膜移行部)に病変ができるため、皮膚の下の粘膜が露出し、真っ赤にただれたような所見となります。そして毛が生えている部分には、他の2つの型と同じような痂皮が見られます。好発犬種はジャーマン・シェパード・ドッグ、シベリアン・ハスキー、ダックスフンド、プードルの成犬ですが、色々な品種で発症します。
犬・猫の天疱瘡の原因
動物の表皮にある角化細胞は、デスモソームと呼ばれるタンパク質の塊によってお互いがくっついています。落葉状または紅斑性天疱瘡患者では、自己の免疫が異常な働きをしてしまうことにより、このデスモソームの中にあるデスモグレインという接着分子を攻撃してしまいます。それにより、細胞同士が離れ、皮膚に異常をきたしてしまうのです。粘膜類天疱瘡では、免疫の攻撃対象が表皮よりも深い、皮膚基底膜という部分になります。そのため、粘膜にまでただれが起きてしまいます。紫外線、遺伝的要因、アレルギー、細菌、ウイルス感染、薬物が引き金になっているという説もありますが、詳しいことは分かっていません。
犬・猫の天疱瘡の診断
今までの病歴の聴取、身体検査、病変部の細胞の採取(細胞診)などを行います。また、抗核抗体(ANA)検査で陽性になることがありますが、他の慢性疾患でも陽性になることがあるので、天疱瘡に特徴的なものではありません。確定診断をするには、病変部の皮膚を麻酔下にて採取し、顕微鏡で調べる必要があります(皮膚生検)。前述の天疱瘡の原因で述べたような特徴的な所見が得られた場合、天疱瘡と診断できます。
犬・猫の天疱瘡の治療
①紫外線を避ける
紫外線による状態の悪化を防ぐため、日差しを避け、日焼け止めを用いることがあります。
②シャンプー
根本的な治療法ではありませんが、病変部を清潔にします。
③抗生物質
二次的な感染を治療・防止するため、長期間にわたり適切な抗生物質を用います。抗生物質を使用した犬は生存率がはるかに高いというデータもあります。
④ステロイド
飲み薬による全身投与、または塗り薬を用います。症状を制御するためには高用量のステロイドが必要になることも少なくないため、副作用には注意が必要です。
⑤免疫抑制剤
ステロイドの副作用を減らすために併用することも多い薬です。効果を発揮するまでに時間を要することがあります。
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