猫の眼に黒いしみ・・・?それは角膜黒色壊死かもしれません
「猫の角膜黒色壊死症」は、そんな特徴的な見た目を飼い主さんが発見してあげることでわかる病気です。少し難しいかもしれませんが、ぜひこの病気のことを知って、愛猫の健康を守ってあげてください。
愛猫の眼をよく見てみると、前にはなかったような黒いしみや模様が見つかることがあります。それが病気のサインかもしれないのです。
角膜黒色壊死症はどんな病気?
角膜黒色壊死症は別名「角膜分離症」とも言われます。
基本的にはどんな種類の猫にも見られる病気ですが、ペルシャやヒマラヤン・シャムネコに多く報告があります。
眼の中央表面に、真っ黒または黒っぽい茶色のしみのような模様が小さく現れます。気づかないままでいると、広がって黒目を覆うくらいまで拡大することもあります。また、眼の表面だけでなくもっと深いところまで広がることもあります。
まだ小さく浅いしみのうちは、猫はほとんどが無症状で気にすることはあまりありません。
しかし徐々に大きく深く広がってくると、眼の痛みや涙が多く見られ、眼に傷がついたり穴があいてしまうような状態につながってしまうこともあります。
目の表面に黒いしみが見られるだけでなく、赤い血管が浮いていたり、白っぽく腫れている部分があるときは要注意です。それは猫自身が苦痛を感じるような異常があるサインになります。なるべく早く、病院に連れていく必要があります。
角膜黒色壊死症は何が原因なの?
残念ながら、これ!といったあきらかな原因やそのメカニズムはまだわかってはいません。
しかし以下のような可能性が報告されています。
①ウイルス感染
猫のヘルペスウイルス1型(FHV-1)は、いわゆる「ネコカゼ」といわれる猫ウイルス性鼻気管炎の原因ウイルスです。
ありふれたウイルスで、外にいる猫は保有していることが多く、感染猫の口鼻そして眼の粘膜からの分泌物に大量に含まれています。ほかの猫は口や鼻、眼からウイルスを取り込んでしまうと感染し、鼻の中の粘膜で増殖後、眼やのど、気管に広がり発症します。
②眼瞼内反症
いわゆるまぶたのフチが内側(眼球側)に反転してしまう異常です。
ペルシャやその交配種であるヒマラヤン、それらの雑種で発生しやすく、悪化にすると「まぶた」の外側の毛の生えている皮膚までが眼球側に巻き込まれてしまいます。そのため眼の表面の角膜に与える刺激が病的なレベルとなり、もとに戻らない状態になってしまいます。
③角膜潰瘍・炎症
さまざまな理由で、角膜の傷が治らず炎症を起こしている状態が長く続いてしまう慢性化が、新たな異常を引き起こしてしまうことがあります。
④その他
症状は出ていないFHV-1保有猫に、長期にわたるステロイドなどの免疫抑制点眼を使用する、または角膜切開術を行ったのちに発生することもまれにあります。
角膜黒色壊死症はどんな検査をするの?
まずはその眼に現れている病変を、眼科スリットランプを用いてよく観察します。黒いしみの大きさや深さ、広がりなどを注意深く確認していきます。
また角膜の慢性的な炎症の確認、眼瞼内反症や異常まつ毛、そして猫ヘルペスウイル1型感染症の兆候がないかも合わせて診断します。
ここまでは、一般的には診察室で、その場で行うことができる検査になります。
それに加え、猫ヘルペスウィルス1型感染症を詳しく検査するためには、PCR検査が行われることもあります。唾液や鼻水を採取し、検査センターに送って外部検査をしてもらいます。
観察の結果角膜に傷がみつかる、角膜潰瘍のこともあります。
この場合は、細菌感染につながることを予防するためさらに以下のような検査が必要です。
細菌培養検査:目やにや角膜表面の分泌物をぬぐい、染色または培養することで傷周辺に細菌が存在していないかどうかを確認します。
角膜染色検査:角膜に特殊な染色液をのせブルーライトで浮かび上がらせることで、角膜の凹凸を確認し潰瘍の深さや細かい傷がないかどうかを確認します。
角膜黒色壊死症はどんな治療をするの?
角膜黒色壊死症の治療は、手術を行う外科治療、点眼や内服薬を投薬する内科治療、またはその組み合わせになります。
①外科治療
全身麻酔をかけ、しみになっている病変部の角膜切除を行います。
回復を早めるため、角結膜移動術や被覆術といった手術部分を保護する処置も同時に行うことがあります。
症状が進んでいて、角膜の潰瘍や穿孔といった大きな傷があったり、広すぎる範囲での切除が必要な場合は眼の表面だけでなく内部に及ぶ手術になることもあります。
手術後すぐに眼がきれいになるわけではなく、1カ月程度は人工的に瞼を閉じたり、エリザスカラーで眼を守りつつ点眼を行うといった不自由な生活が必要になります。
②内科治療
年齢や他の病気があるなどの理由で、外科治療が難しい場合は数カ月~数年かけて内科治療で経過観察をすることがあります。
・人工涙液やヒアルロン酸ナトリウムなどの保湿
・抗菌性点眼や眼軟膏などの細菌感染予防
・猫ヘルペスウイルス1型に対する抗ウイルス薬内服
猫は犬に比べると比較的投薬や点眼を嫌がってしまうことが多く、長期的な治療には飼い主さんの努力と猫の協力が不可欠です。
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