犬の進行性網膜委縮について
よく知られている高齢ペットの眼の病気と言えば「白内障」ですね。
しかし、見た目は眼がきれいにすんでいても、じつはわんちゃん本人は徐々に見えなくなってきていることもあるのです。全然眼は白くない、でも最近あまり動かないし、よくものにぶつかっていることがあれば、それは「進行性網膜委縮」のサインかもしれないのです。
しかし、何度もそれが続いたり、動きが悪かったりすると「見えないの?」と徐々に心配になってきます。見た目は眼がきれいでも、じつは視力は落ちている病気もあるのです。
進行性網膜委縮ってどんな病気?
進行性網膜委縮(PRA)は、ミニチュア・ダックスフンドが最も多く見られ、ついで トイ・プードル、そしてヨークシャー・テリア、アメリカン・コッカー・スパニエル、ミニチュア・シュナウザー、 チワワ、パピヨンなどにも見られる眼の病気です。
暗い部屋で動けずじっとしている、薄暗い夕方の散歩であまり歩かなくなったことなどを心配して来院されることが多くあります。
この病気の初めのうちは、暗い場所でのみ視力の低下が起こりますが、明るい所では問題なく行動しているのでほとんどの飼い主さんはこの時点では気づくことができません。
少し進行した中期になって、明るい所で見づらくなっていも、それまので記憶で場所を覚えていたり、嗅覚や聴覚・触覚でいわゆるカンで適応してしまうため、やはり飼い主さんには気づかれにくいのです。
結局来院されたときには初期ということはほとんどなく、中期~後期の視覚障害があきらかになってしまっていることがほどんとです。
進行性網膜委縮って何が原因なの?
進行性網膜委縮は、遺伝性疾患です(多くは親からもらったペアの遺伝子のうち、変異がある遺伝子がそろったことにより発症する常染色体劣性遺伝です)。犬種によってはいくつかの型が報告されており、1つの犬種のなかでいくつもの型がある場合もあります。
遺伝子のタイプはいくつかあっても、症状はほぼ同じです。見たものを視覚信号に変化させるための網膜の機能が進行性に障害されていき、最終的には視覚低下から失明に至ります。
多くが6歳齢前後で発見されますが、早い場合は生後数ケ月からはじまることもあります。
遺伝性疾患を防ぐためには、計画的な繁殖が必要であるため、盲導犬訓練センターでは生後半年程度で眼科検査とPRA遺伝子検査を実施しているところもあります。こういった検査をクリアした犬のみを選んで繁殖させることで、発症リスクを最小限に抑えているのです。
進行性網膜委縮ってどんな検査をするの?
まずは簡単なスクリーニング検査として、光に対する反応性や障害物をよけることができるかなどを確認します。
ここで明るい所と暗い所での行動に違いがみられる場合には、次のステップとして眼底網膜検査が実施すされます。
眼底網膜検査は、点眼薬でわんちゃんの瞳孔を開かせる(散瞳)させた後、特殊なレンズと光を使用して観察します。
見るという刺激を脳に伝えるための視神経は集まっている視神経乳頭、視神経につながる細胞がたくさん分布している網膜、そしてそのすべてを含む眼底領域全体の血管の状態などを見る検査です。
ちょっとまぶしいのとじっとしている時間が長いので、わんちゃんによっては怖がってしまったり嫌になってくることもありますが、痛いことはないためたいていの犬は我慢してくれます。
より見えているかどうか、はっきりと診断する必要がある場合は鎮静や麻酔可で網膜電位図検査が行われることもあります。
また実は、この病気が進行すると白内障にもなっていることがあります。
さらに白内障の進行により、炎症が合わせて起こっているとただ見えないだけでなく、痛みや不快感といった苦痛につながってしまう悪化することがあるので、さらなる検査が必要になることがあります。
例えば眼圧測定検査、眼の超音波検査などです。
進行性網膜委縮ってどんな治療をするの?
進行性網膜委縮は、進行する遺伝性疾患のため病気が進行し失明してしまっている場合、治療方法はありません。
しかし、視力低下はあってもまだ失明はしていない段階であれば、その進行を遅くする進行抑制治療を行ないます。
①抗酸化剤
網膜にある視細胞が酸化障害されるのを防ぐ目的で使います。
②循環改善薬
血液の循環をよくすることで、眼底血流が悪くなるのを遅らせ血管保護します。
③神経保護薬
視神経を保護し、視覚刺激の衰えを防ぎます。
アスタキサンチンやビタミンE、ルテインやタウリンそしてビタミンB複合体などがサプリメントや医薬品として処方されます。こういった内服をできる限り継続して与えることで、わずかでも効果を期待します。
研究レベルでは、遺伝子治療が試験的に行われ良好な結果が得られている報告も見られるが、具体的な治療に応用されるようなレベルのものはまだ認められていません。
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