これからの動物愛護センターの役割【殺処分減・譲渡・啓発活動】
しかし、収容施設ではいまだに殺処分されている犬猫たちがたくさんいます。
動物愛護センターでは、どのような取り組みがされているのでしょうか。
これからの動物愛護センター役割についてお話します。
動物愛護センターのイメージとしては、迷子になった犬や、飼い主から引取った犬猫を収容している施設だと思われている方が多いと思います。
施設名に「愛護」という名前が付いているので、他には、どんなことをしているのか気になりますよね。
また「保健所とは、どう違うの?」と思われている方もいらっしゃる方も多いと思います。
最近の動物愛護センターでは、収容・殺処分(悲しいことに)・譲渡のほかに、飼い主への適正飼育の指導などの啓発活動も行なっており、単なる収容施設とは違ってきています。
動物愛護センターとは
各自治体には、迷子になった犬や飼い主から引取った犬猫たちの収容施設があります。
しかし、必ずしもすべての自治体に、動物愛護センターがある訳ではありません。
動物愛護センターがない自治体は、保健所がその役割をしています。
保健所でも、収容・殺処分の他に譲渡も行われています。
動物愛護センターは、譲渡のほか飼い主への適正指導やふれあいイベントなどの啓発活動を積極的に行っており、動物愛護に特化した施設といえます。
令和元年度「犬・猫の引取り及び処分の状況」
では、令和元年度「犬・猫の引取り及び処分の状況」を見てみましょう。
環境省のHPによると、令和元年度の「犬・猫の引取り及び処分の状況」は下記のようになっています。
犬 猫 計
引取り : 3,300 10,403 13,703
所有者不明 : 29,255 42,939 72,194
計 : 32,555 53,342 85,897
返還 : 10,814 305 11,119
譲渡 : 16,312 25,636 41,948
殺処分 : 5,635 27,108 32,743
この表によると、飼い主が飼育放棄をし、引き取られた犬猫の数は 13,703匹。
所有者不明で収容された犬猫の数は 85,897匹です。
また、無事に飼い主へ返還、新しい飼い主へ譲渡された犬猫の数は 53,067匹。
そして、とても悲しいことに、1年間に殺処分された犬猫の数は 32,743匹となっています。
5年前の平成26年度の状況は、下記の通りです。(犬猫合計)
引取り・捕獲151,095匹 返還・譲渡50,217匹 殺処分101,338匹。
比べてみると、返還・譲渡はほぼ変わりなく、引取り・捕獲が約50,000匹 殺処分が約70,000匹減っているのがわかります。
収容されている犬猫は、毎年同じように譲渡されています。
このことから、「ペットショップで買う」という選択のほかに、「保護犬・保護猫から迎える」ということも定着してきているようです。
その一方で、飼い主からの引取り・迷い犬猫も減ってはいるものの、まだ80,000匹もいます。
この数を減らすことで、さらに殺処分数も減ってきます。
それには、いったいどうしたらいいのでしょうか。
次の動物愛護センターの取り組みのところでお話しします。
動物愛護センターの取り組み・役割
動物愛護センターの取り組みとして、譲渡のほかに次のような業務もされています。
【譲渡後のフォロー】
犬猫を譲渡したら終わりということではなく、譲渡後も家庭訪問やしつけ教室、譲渡犬や飼い主さん同士の親睦や情報交換の場の提供などを行っている自治体もあります。
【啓発活動】
啓発活動では、しつけ教室・ふれあいイベントの実施、適正飼育の指導などを行っています。
犬猫のことを十分に理解し、本当に飼えるのか考えてもらうこと。
飼い始めたら、最後まで責任を持ってお世話をし、終生飼育をしてもらうことが大事になってきます。
【ボランティアと連携】
また、動物愛護センターでは、ボランティアさんとの連携を大切しています。
10年前の平成21年度の犬猫の殺処分数は、229,832匹でした。(環境省HPより)
令和元年度の32,743匹と比べると、約1/7に減っています。
これは、職員さんたちの努力もありますが、ボランティアさんたちの活躍が大きいと思います。
今後も、ボランティアさんとの連携が必須となってきます。
「犬猫を迷子にさせない」「去勢・避妊の必要性」「猫は完全室内飼育」「地域猫活動」「終生飼育」などを徹底すれば、不幸な犬猫は減り、殺処分数も減ってきます。
動物愛護センターでは、この啓発活動に取り組んでいます。
これからの動物愛護センターへの期待
実際に、適正飼育をしていない飼い主に対して、動物愛護センターはどこまで指導ができるのでしょうか。
「明らかに、お散歩に連れて行っていない」「外に繋ぎっぱなしである」「お世話が十分にされていない」など、近隣住民からの相談や通報があったときに、明確な対応が求められます。
このような状況は、ネグレクトにあたり、外国では、動物虐待として扱われるケースが多いです。
これからの日本の動物愛護センターでも、適正飼育をしていない飼い主に対しての指導に期待したいです。
これから設立する動物愛護センターには、「殺処分機」を導入しない自治体もあります。
また、現に苦しんで亡くなる炭酸ガスでの処分を中止し、注射による安楽死を行っている施設もあります。
動物愛護センターの「愛護」という名前に、「殺処分」はとても似つかわしくなく、譲渡や子供たちへの教育施設であるということを示していくことが大事ではないでしょうか。
そして、動物愛護センターは自治体の組織なので、働いている方はみんな公務員です。(非常勤、嘱託、アルバイトなど除く)
まだ少ないですが、自治体によっては、動物愛護センターの運営全般を委託業者が行っているところもあります。
「犬猫たちのために働きたい」という一般の方でも、センターで働けるようになるといいですね。
まとめ
・保健所は各自治体にあるが、動物愛護センターはすべての自治体にあるわけではない。
・保健所では出来ることが限られており、「動物愛護」に特化した動物愛護センターの各自治体への設立が期待されること。
・動物愛護センターでは、殺処分減も目指し、譲渡にも力を入れている。
・不幸な犬猫を減らす根本的な解決は、飼い主への適正飼育の指導などの啓発であり、その役割を動物愛護センターが担っていること。
このように、動物愛護センターは、単なる収容・殺処分の施設から譲渡・啓発活動を実施する施設へと変わっていました。
これから犬猫を家族に迎えようと思われている方は、ぜひ動物愛護センターや保健所の収容施設へ足を運ばれてみてください。
犬猫たちとのふれあいイベントへの参加や飼育方法の勉強をするのもいいと思います。
また、犬猫たちの幸せに貢献できるボランティアに興味がある方も、ぜひお近くの動物愛護センターや保健所に問い合わせをしてみてくださいね。
犬猫たちみんなが、幸せに暮らしていける日本になりますように…。
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