愛猫が下半身麻痺になってしまったら~治療と介護~
なかなか、見たことも聞いたこともないという方も多いかと思いますが、実際全国には下半身麻痺でも元気に生活している猫ちゃんはたくさんいます。
けれどもその生活は、飼い主さんの介護と懸命なお世話で成り立っているといっても過言ではありません。
今回はそんな猫ちゃんたちがどうして下半身麻痺になってしまうのか、そして治療と介護の方法についてご説明していきます。
猫の下半身麻痺とはどんな状態?
下半身麻痺とは下半身(主に腰から下)を動かすことが出来ずに、日常生活に支障が出る状態のことを言います。
猫の場合は後ろ足が2本とも伸びきってしまっていることが多く、後ろ足を使って起立や歩行をすることが出来ません。
上半身の力と前足のみで足とお尻を引きずって移動します。
そのため上半身は筋肉質になることが多く、元気な猫だとカーテンを登ったり、他の猫と追いかけっこ出来たりする猫もいます。
また、多くの場合は排尿をつかさどる神経も麻痺してしまっているので、自力での排泄が困難となります。
排泄は垂れ流し状態になってしまう猫もいれば、全く出ない猫もいます。
そのため排泄の介護は下半身麻痺の猫では必要不可欠です。
そして、犬は何らかの原因で下半身麻痺になってしまった場合に、車いすという選択肢が出てきますが、猫の場合はほとんどが車いすを選択しません。(もちろん車いすを使用している猫ちゃんもいます)
というのも、猫は犬に比べて身体が非常に柔らかいため、車いすを装着してもするりと抜け出てしまうことが多いためです。
猫は犬と違いお散歩もありませんし、室内で飼育されている多くの下半身麻痺の猫ちゃんは車いすなしで生活しています。
下半身麻痺の状態でも、その他の健康状態を良好に保つことが出来れば、寿命を全うすることも全く珍しいことではなく、今現在頑張って生きている下半身麻痺の猫ちゃんは実はたくさんいるのです。
下半身麻痺になる主な原因
猫が下半身麻痺になる主な原因は、先天的疾患、椎間板ヘルニアなどの疾患、もしくは事故などの外傷によるものです。
また、心筋症による血栓症で血栓が後ろ足の血管に詰まった場合も下半身麻痺になることがあります。
しかし残念ながら先天的の下半身麻痺の場合は、排泄が上手にできないことから体調を崩すことが考えられ、短い生涯を終えることが多いでしょう。
そして血栓症の影響の際には、血栓症の治療が終了すると麻痺はなくなることがほとんどです。
そのため介護生活を送る下半身麻痺の猫ちゃんの多くは椎間板ヘルニアや交通事故などの外傷性のものになります。
ヘルニア部分が影響したり、事故などで脊椎損傷・脱臼・骨折してしまうことにより神経を圧迫し、下半身が麻痺した状態になってしまうのです。
下半身麻痺の治療法はあるのか?
下半身麻痺になってしまった原因によって治療法は異なりますが、完全な治療法はありません。
前述した通りヘルニアや心筋症などの治療は行いますが、それによって傷ついてしまった神経は治療をしても完治することはありません。
そのため脊椎骨折などの手術をして骨は付いたとしても、骨の中にある神経は正常に機能していないため下半身の麻痺は取れることは無いでしょう。
下半身麻痺と上手に付き合う~介護~
下半身麻痺の猫ちゃんと暮らしていくには、介護が必要不可欠です。
①排泄の介護
前述したとおり、多くの下半身麻痺の場合、自力排泄が出来ません。
垂れ流しになってしまう時にはオムツなどが必要になりますが、それでも完全に膀胱内の尿を排泄することは出来ないのです。
膀胱内に尿が残ったままになっていると膀胱炎になってしまいますので、
下半身麻痺の猫の最大の介護として「排泄」をさせることが必要です。
尿を出す方法としては、大きく二つあります。
一つ目は圧迫排尿法と呼ばれる方法で、下腹部にある膀胱を直接押して排尿をさせます。
二つ目はカテーテルを直接挿入し尿を出す方法です。
性別や下半身麻痺の状態によってどちらの排泄法が良いのかは変わってきます。
排便に関しては多くの場合採尿させているときに出ることが多いですが、便秘などで便が出にくくなってしまった場合などには腸を外側から押して動かしたり、浣腸をしたりして対処します。
どちらも獣医師の指導と慣れるまでの練習が必要になり、さらに1日に2回行わなければならず、簡単ではありません。
しかし行わないと猫ちゃんの命に直接関わってきますので、介護をしている飼い主さんたちは毎日しっかり行っています。
②怪我の予防
下半身麻痺の状態で動いていると、主に同じ皮膚を引きずって歩いてしまうので擦り傷が出来やすくなります。
そのため定期的に皮膚の状態を確認し、必要に応じて手当てをしてあげます。
また麻痺しているためヒートマットやこたつ、ストーブなどの保温器具での火傷にも注意が必要です。皮膚の感覚がないため重症化しやすく、火傷の発見も遅くなってしまうことがあります。
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