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犬猫の血液検査/血液化学検査における各項目の臓器別の見方

獣医師
松本 千聖
[記事公開日]  [最終更新日]
春のフィラリア検査の際のオプションや本格的な健康診断、または調子が悪い時のスクリーニング検査の1つなどで、動物の血液検査/血液化学検査を実施されたことのあるオーナーさんは多いと思います。今回はその血液検査/血液化学検査における各項目の臓器別の見方について解説したいと思います。
  参考文献:石田卓夫編, 伴侶動物の臨床病理学, 2014
[ 目次 ]
犬猫の血液検査/血液化学検査における各項目の臓器別の見方

血液検査(CBC)

血液検査(CBC)は主に「白血球系」「赤血球系」「血小板系」に分けることができます。(細かくすると更に「血漿部分」も存在しますが今回は割愛します)
  ・「白血球系」
① 炎症の有無:炎症の存在は通常、「好中球増加」「単球増加」「好酸球増加」で検討することが多いです。ただし、「好中球増加」の原因としては炎症以外にも興奮やストレス/ステロイド反応などでも見られることがあることから「好中球増加=炎症」と早急に結び付けることはしません。また、「好酸球増加」においてもアレルギーや寄生虫感染などの特殊な炎症も候補に入れる必要があります。
② ストレスの有無:ストレスの存在は「リンパ球減少」で検討します。ただ、「リンパ球減少」はストレス以外にもクッシング症候群やリンパ系腫瘍でも見られることがあります。
③ 腫瘍性疾患の存在:「好中球減少」や「重度のリンパ球減少」は腫瘍性疾患の存在も考えられるため、慎重に検討する必要があります。
  ・「赤血球系」
① 赤血球増加の有無:赤血球が増加する原因は「相対的増加症」としての「脱水」と「出血性胃腸炎」、「二次性多血症」としての「心疾患」、「呼吸器疾患」、「腎臓腫瘍」、「真性赤血球増加症」である「慢性骨髄性増殖性疾患」が考えられます。
② 貧血の有無:貧血は「RBC」「PCV」「Hb」のいずれか、あるいは全ての低下から検出されます。貧血が見られた場合は塗抹標本によって再生像を確認する必要があります。
  ・「血小板系」
血小板が減少する原因としては「骨髄での産生低下」、「免疫介在性の破壊」、「腫瘍に伴う大出血」、「脾腫」などが考えられます。反対に血小板が増加する原因としては「急性出血」、「悪性腫瘍」、「脾臓腫瘍による脾臓機能低下症」などが考えられます。

血液化学検査

血液化学検査は血液中の化学成分を分析することで、様々な臓器に関連した異常を検出するために実施する検査です。対象とする主な臓器は「肝臓」「腎臓」「副腎」「甲状腺」「消化器」「膵臓」などの幅広い評価が可能となります。
① 肝臓:肝臓の評価の目的は「肝細胞の障害の有無」、「胆道系疾患/胆汁停滞の有無」、「肝不全の有無」を確認することです。
 ・肝細胞の障害の有無:肝細胞の障害を確認するためには、まずALTとASTを見ます。一般に肝細胞の障害ではALTのみあるいはALTとASTの両方が上昇します。ASTが上昇していて、ALTが正常の場合は肝細胞の障害ではなく筋肉疾患を疑い、追加検査を選択する必要があります。
 ・胆道系疾患/胆汁停滞の有無:胆道系疾患/胆汁停滞はALP、GGTといった肝酵素に加えてTBilで確認します。ただし、犬ではステロイドの影響でALP、GGTの上昇が見られるため、注意が必要です。ステロイドの影響がなく、TBilの顕著な上昇がなくともALP、GGTが増加していれば胆道系疾患が疑われます。
 ・肝不全の有無:肝不全が起きているかはTP、Alb、BUN、TChoといった肝機能に関連する項目を確認します。肝不全による産生低下では、これらの項目は下降を示します。
② 腎臓:腎臓の評価の目的は「腎機能障害の有無」、「腎不全の有無」、「ネフローゼ症候群の有無」を確認することです。まずは腎疾患により上昇するBUN、Creと腎不全の指標であるP、Pと共に評価が必要なCa、ネフローゼ症候群で下降するAlbを確認します。これらに異常が見られる場合はさらに追加の項目を確認する必要があります。
③ 副腎:副腎疾患を確定するためには特殊な内分泌検査が必要となりますが、特殊検査を行う前のスクリーニングとして血液化学検査を実施します。犬で見られる副腎皮質機能亢進症ではALP、GGT、TChoの上昇が起こります。
④ 甲状腺:甲状腺疾患を確定するためにも特殊な内分泌検査が必要となりますが、それ以前のスクリーニング検査としてTChoを確認します。甲状腺機能低下症では、しばしばTChoの高値が見られます。また、甲状腺機能亢進症ではALT、ALPの上昇が疾患を示唆する指標となります。
⑤ 消化器:消化器症状が見られる場合は、消化器系の検査としてNa、K、Cl、TP、Alb、Glob、TChoを確認します。これは消化器疾患を探すための検査ではなく、疾患に伴う異常を検出するための検査となります。例えば、Alb、Glob両方の減少が見られる場合には蛋白喪失性腸症が疑われますし、TChoは激しい小腸疾患で低値を示すことがあります。また、Na、K、Clは嘔吐、下痢による電解質異常を検出できますし、胃に異常があるための嘔吐では特にClが減少します。
⑥ 膵臓:膵臓の評価の目的は「膵炎の有無」、「膵外分泌不全の有無」、「膵内分泌不全の有無」を確認することです。
 ・膵炎の有無:犬の膵炎ではAmy、Lip、TChoが膵炎で上昇することがあると言われていますが、膵炎を特異的に検出することができる膵特異的リパーゼが犬猫ともに、より有用です。
 ・膵外分泌不全の有無:膵外分泌不全では一般的に小腸性下痢や体重減少が見られるため、消化器系の項目に異常が認められます。
 ・膵内分泌不全の有無:膵内分泌部の機能はインスリンの分泌であるため、インスリンの欠乏あるいは過剰による血糖値の異常を確認します。よってGluを見て高血糖または低血糖の有無を確認します。また、併せて糖尿病で上昇することの多いTChoも確認することが必要です。

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