猫の気管狭窄
原因
管外性圧迫、悪性狭窄、良性狭窄の3つに分類されます。
管外性圧迫は気管の外側に気管を圧迫するものがある場合で、リンパ腫、甲状腺腫といった腫瘍や、その他の前縦隔腫瘤状病変と呼ばれるもの、食道のガスや異物などがあります。
悪性狭窄は悪性腫瘍が気管の内側にできてしまうものです。腺癌、扁平上皮癌、リンパ腫といった病気が知られています。
良性狭窄は悪性腫瘍以外の原因で気管の内側が狭くなってしまうものです。全身麻酔をかけた時に使用する気管チューブの影響、気管を切るような手術後にできる肉芽組織、気管の外傷、気管をつなぎ合わせた後に瘢痕組織ができてしまい狭窄してしまう、といったものから、気管虚脱、気管の炎症、先天的な奇形などがあります。
診断
呼吸困難があるかどうか、呼吸音に異常があるかどうかを確認します。
その後、レントゲン検査を行います。確定診断のためには、動脈血ガス分析という血液検査や、CT検査、気管・気管支鏡検査が必要になることもあります。
レントゲンの撮影装置はほとんどの病院にありますが、それ以外の検査機械は持っていない病院が多く、緊急性が高い病気であるにも関わらず、すぐに診断できないこともあります。
一般的な動物病院で行う初期治療
問診と呼吸困難を確認したら、次の検査に進む前に状態の安定化を行います。これは数時間かかることが多く、数日に及ぶこともあります。
ケージレストとは安静にするということですが、これだけで気管が正常の60%くらいまで狭くなってしまっている猫でも落ち着かせることが可能だとされています。
クーリングによって熱感を下げると呼吸数が減るため、冷たい床に置いたり、冷風を当てます。
ICUに入れてあげることで、温度と湿度、酸素濃度の管理が可能になります。呼吸困難の場合は、酸素濃度を上げることで呼吸が少し楽になる可能性があります。
これで状態が落ち着いたら、レントゲン検査を行って胸の中に異常がないかを調べます。検査で気管狭窄の診断が可能であれば、次にその原因が積極的な治療の対象になるものかどうかを検討します。これは一般的な動物病院で診断可能なものと、そうでないものがあるため、診断できなければより施設の整った病院を紹介することになります。
治療対象
原因のうち、気管の周囲にできた異常による管外性圧迫、悪性気管内腫瘍、気管外傷後の肉芽組織性狭窄、限局性気管虚脱が積極的治療の対象になります。
治療としては、狭窄している部分を切除してつなぎ合わせる手術が理想です。しかしながら、狭窄している場所が単発ではなく多発していたり、広い範囲で狭窄が起こっている場合は手術はできません。
近年実施できるようになってきた治療
獣医療にも気道インターベンションを行うことのできる器具が発売されるようになりました。インターベンションとは、いわゆるカテーテル治療のことです。外科手術ができない猫に対しても、生活の質を維持できる可能性があり、注目されています。
①バルーン拡張術
気管の狭窄している部分をバルーンで広げる治療法です。現時点では安定した治療成績が得られないこともあるようです。
②シリコンTチューブ留置
ヒトの気道確保に用いるシリコン製の気管切開チューブが、猫にも利用可能です。しかしながら、これは一時的な気道確保であり、使用期間は長くても2ヶ月位以内が望ましいようです。また、獣医療ではまだまだ使用経験が少なく、どんな症例にどのように使うのかといったことも確立されていません。
③自己拡張型金属ステント(SEMS)設置
ステントを気管の狭窄している部分に設置する治療法です。一度設置したら取り外すことはできません。非常に高額です。
④気管支鏡下減容積術
気管支鏡を気管に入れて、ポリープや腫瘍を器具を用いて一部切除することで狭窄を解除する治療法です。
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