猫の肥大型心筋症の診断と治療
この記事では猫に多い肥大型心筋症についてお話ししていきます。
肥大型心筋症はそれによる不整脈や血栓症などさまざまな疾患を併発することで知られていますので是非読んでいただければとおもっています。
人医療では,肥大型心筋症の確定診断および心機能の評価のために,コンピュータ断層撮影(CT)検査や磁気共鳴画像法(MRI)検査などの画像検査,遺伝子診断や心臓カテーテル検査(心筋バイオプシーを含む)など、さまざまな診断法が取り入れられています。
それにより,病態に応じた治療が可能となっていますが、し猫ではこれらの検査を日常的に行うことが難しく,遺伝子変異に関する報告も少なです。心超音波検査により「心筋の肥大」は検出できても心機能が十分に評価されていないため,正確な病態の が困難であり、結果として治療方法に関しても画一化することが難しいという状況にあります。
今回は近年報告されている新たな知見についてお話ししていきます。
どういう病気なの?
肥大型心筋症は,猫の心疾患のなかで最も多く認められています。
家族性の発生が報告されている品種(メインクーンやラグドール)や常染色体優性遺伝をすることが報告されている品種(アメリカン·ショートヘア)があり,ほかにもいくつかの好発品種(ブリティッシュショートヘア,ノルウェージャン·フォレストキャット,ベンガルあるいはサイベリアン)が知られているが、最も多いのは雑種猫です。
診断時年齢は3ヵ月齢から17 歳と幅広く,ラグドール,メインクーン,スフィンクスなどでは若齢での発症が知られています。雌よりも雄に多いとされます。
猫のHCM は多くの場合,無徴候です。
しかし,左室の拡張機能低下に伴い,肺水腫や胸水能なの左心不全を発症することもあり、とくに左房拡大が重度な場合は血栓が形成され血栓が末梢動脈へと流出した場合には動脈血栓症を発症します。一部の患者では不整脈による突然死が認められています。
診断法は?
補助的に心電図検査,胸部レントゲン検査が行われるものの、猫の HCM の臨床診断は心臓超音波検査による形態学的評価に大きく依存しています。最も重要な検査は心筋壁厚の測定であり、猫では心臓超音波検査で左室心筋の拡張末期壁厚が6mm または5.5mm を超え
た場合に肥大型心筋症と判断されます。
そのうえで、甲状腺機能亢進症や高血圧などによる代償性の心筋肥大や心筋炎、心臓腫瘍など肥大型心筋症の類似疾患、脱水による心筋の偽肥大が除外された場合に肥大型心筋症と臨床診断がつけられます。
しかし,近年,前述の疾患に加え,心拍数や体重も心筋壁厚に影響を与える因子であることが明らかとなっていて、さらに,心機能評価やバイオマーカーも診断に有効である可能性が示唆されています。
バイオマーカーって??
バイオマーカーとは血液や尿・分泌物中に含まれるタ ンパク質、ホルモン、酵素等の物質を測定して病気の診 断に利用される物質を指すものです。
心臓バイオマーカーとは、心臓で産生されるナトリ ウム利尿ペプチドなどの生理活性物質や心筋トロポニン のような心筋特異的蛋白の総称であり、心臓細胞の機能 (負荷や傷害)を生化学的に評価することで、心疾患・ 心不全の病態を把握するための検査法です。
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