放っておいても大丈夫?犬の不整脈(刺激伝導異常)を解説!
定期的な健康診断を受けることで早期発見が可能な疾患ですが、ヒトと比べて軽視されがちな疾患でもあります。
本記事では犬の不整脈、特に刺激伝導異常による不整脈を解説し、疾患に対する理解を深めて頂くことを目的としています。
犬は自分で体の異常を訴えられない分、不整脈に気付くのが遅くなる傾向にあります。
では、犬の不整脈は放置しておいて良いのでしょうか。
本記事では犬の不整脈の中でも、刺激伝導系の異常について解説していきます。
最後まで読んで頂き、犬の不整脈に対する意識を高めて頂ければと思います。
犬の心臓の刺激伝導系
犬の不整脈を理解するために、まずは心臓の刺激伝導系について説明していきます。
犬に限らず動物の心臓は、心筋の電気的な刺激によって動いています。
その電気刺激は、右心房にある洞結節(ペースメーカー)から起こり、心房筋、洞房結節を経て一回心尖へと伝わり、そこから心室筋へと伝導していきます。
刺激伝導異常は、一連の刺激伝導系の一部または全部に異常が起こり、電気刺激が正常に伝導しない状態を言います。
これによって心筋は収縮しなかったり、また収縮に時間差が生じることになります。
刺激伝導異常の分類
刺激伝導異常は、前述した刺激伝導系の流れの中で、障害が起きている部位によっていくつかの種類に分類されます。
・洞房ブロック(洞停止)
洞結節からの電気刺激が心房筋に伝導しなかったり、電気刺激を産生する能力がそもそも抑制されることで発生します。
迷走神経の緊張亢進や、左右両心房に負荷をきたす心疾患などが原因となります。
・第Ⅰ度房室ブロック
洞房結節や、心室筋へ刺激が広がっていく過程が障害されることで発生します。
各種薬剤投与や高カリウム血症などで発生しますが、加齢でも見られます。
一般的に症状が見られない時は治療は行いません。
・第Ⅱ度房室ブロック
心房室間の伝導が間欠的に欠落することで発生します。
これによって心房の興奮は起こりますが、心室は興奮しないという状態に陥ります。
ここからさらに高度のブロックに進行することもあり、注意が必要です。
・第Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)
心房から心室への刺激伝導が完全に途絶した状態で、心房は収縮しますが、心室は別の中枢(心室中枢や房室中枢)から受動的に動かされます。
心電図で見ると、心房の収縮を表す波形と、心室収縮を示す波形が全く関係なく別々に出現します。
・脚ブロック
心尖に伝わった電気刺激が、左右の心室に広がる過程で障害が起こることで発生します。
障害された側の心室も全く収縮しないわけではなく、例えば左側がブロックされている場合は、先に右側が収縮し、刺激は心臓をグルっと一周回って左側に届き、遅れて左側が収縮します。
犬における刺激伝導異常による症状
軽度の洞房ブロックや第Ⅰ度房室ブロックでは症状が見られないこともあります。
不整脈が重度になると、全身循環障害による虚脱や失神、呼吸困難、腹水貯留といった症状が見られます。
突然の意識障害が見られた際には注意が必要です。
犬における刺激伝導異常の診断
当たり前ですが、心臓の刺激伝導異常は外から見ただけでは判断できません。
確定診断は心電図検査になりますが、その前の入り口としての身体検査も忘れてはいけません。
・身体検査と聴診
刺激伝導異常による不整脈の場合、心拍数に異常が見られない場合があります。
そのため、聴診では心音のリズムが一定かを確認します。
また、呼吸との関連や頚静脈の拍動の有無も重要となります。
特に頚静脈拍動は、心不全を呈している状態で認められる他、心房と心室の収縮が同期していない不整脈(心房細動や第Ⅲ度房室ブロックなど)で見られることがあります。
・心電図検査
不整脈の存在が疑われる際に、最初に選択される検査になります。
刺激伝導異常による不整脈では、波形の消失や遅延といった徴候が見られます。
また波形の高さや持続時間なども含めて総合的に診断します。
・ホルター心電図
心拍は、興奮や緊張といったストレス要因によって容易に変化します。
それは刺激伝導系に関しても同様で、動物病院というストレス空間において不整脈が消失することもあります。
自宅での安静時の心拍をモニターするために、ホルター心電図検査(24時間心電図検査)を実施する動物病院もあります。
しかし機器類の貸し出しが前提となり、電極が適切に付けられているかをこまめに確認する必要があるなどのハードルがあるため、この検査法を実施できるかは事前に確認が必要です。
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