猫の噛みつきを広い心で考える
たしかに噛みつかれてケガをするのは嫌ですが、これを問題行動だと決めつけて、とにかくやめさせようという意識を働かせるのが、果たして正しいのかどうか。猫の噛みつきについて、猫目線で考えてみます。
しかし、噛みつかれて考えることもあります。これは愛猫の悪事なのか? 単なる問題行動なのか? もしかしたら、一緒に暮らす自分にも問題があるのではないか?
少し目線を落として、心を広くして、噛んでくる愛猫の心中を探ってみましょう。
すべての猫の行動には「理由と意思」がある
あなたの愛猫は、鼻先へそっと指を近づけた時に、どんな反応を示すでしょうか。
多いのは、指先のにおいを嗅いでくる反応だと思いますが、ゴツンと頭突きしてくる猫もいれば、顔をずらしてほっぺに指をすりつける猫もいます。何の反応も示さない猫も、逃げていく猫もいますよね。
その中には、いきなり口を開けて「ガブリ」と噛みついてくる猫もいることでしょう。
しかし、だからといって「おかしい。問題行動だ」と人間目線で判断する前に、考えてほしいことがあります。
猫の行動や反応には、猫なりの理由、そして猫自身の意思が必ず含まれています。
体調や精神的なイライラだけでなく、特に保護猫であれば、今とは違う環境にいた頃の、経験や記憶が関係した行動である場合も考えられます。
決して、噛みつくという行動が特異なものではなく、あくまで愛猫のあらゆるアクションの中にある1つに過ぎないことを、まず頭に入れておきたいものです。
愛猫の噛みにもいろんな「思惑」がある
噛むという行動の中にも、可愛げのある甘い噛み方から、加減をまったく分かっていない嚙み方まで、いろんな種類があります。
攻撃的な噛み方をする時は、早いモーションが多いですが、事実として、相手の手や指をじっくりと見てから、本気で思いっきり噛んでくる愛猫もいるから不思議です。
噛みつく行為をもって、親愛の気持ちを表現する愛猫の場合、そのすべてが甘噛みであるとは限りません。おもちゃやじゃらしに噛みつくのと同じ強さで、飼い主の手や指を噛んでくる場合もあります。
しかしそれを、嫌悪感や敵意ではなく、愛猫が飼い主に対して「いつも遊んでいる、おもちゃやじゃらしと同じくらいにアナタのことが好きですよ」と伝えているのではないかと考えることもできます。
そうなると大事なのは、目の前の噛みつきだけで愛猫の思惑を計ることはできない、ということです。愛猫が普段、おもちゃやじゃらしにどのような噛みつき方をしているか、観察してみたことはあるでしょうか。
愛猫への理解がないことには、「噛みつかれて痛い、困る」という飼い主目線の不満しか湧いてきませんが、普段からの観察によって、愛猫が噛んでくる時、飼い主である自分がどんな行動を取っているだろうか、冷静に考えてみることも大事なのです。
攻撃的に噛んでくる愛猫の「傾向と対策」
当然のことながら、愛猫があなたを攻撃的に噛んでくる時、愛猫の機嫌は、きわめて高い確率で良くありません。
ツメを切ろうとした時、薬を飲ませようとした時、病院に連れて行くためにキャリーへ入れようとした時……皆さんにとって思い当たる節も、あるのではないでしょうか。
これを書いている私も、猫どうしのケンカを止めようとした時や、愛猫がエコバッグの持ち手に脚を突っ込んで取れなくなり、外してあげようとした時に、思いっきり手を噛まれた経験があります。
愛猫は、嫌な思いから逃れるために、あなたを傷つける意図というよりは、自分の身を恐怖から守るための攻撃手段として噛みついていると、考えてみてはどうでしょう。
たとえばヘビが人間に噛みつく時の心理にも、同じことが言えるかと思います。自分よりはるかに大きい人間に出くわし、見下ろされている時の気持ちは恐怖でしかありません。逃げることができない場合には、対抗できる手段として、噛みつくという行動に出ているのです。
それでも、投薬や病院への通院をやめることはできませんから、体を抱える時は後ろからではなく横からとか、フーシャーと威嚇されたら時間を置くとか、なるべく愛猫の不安や恐怖を和らげながらの接触を心掛けたいです。
もしできるなら「噛まれたら、押してみる」
愛猫に攻撃的な噛まれ方をしてしまうと、残念ながらほとんどの場合、出血を伴います。
もし冷静に対処できるゆとりがあれば、なるべく傷を大きくしないための方法の1つとして、噛まれた手を引っ込めず、逆に押し込む動きをしてみるのもおすすめです。
場合によっては、痛いのを我慢しての動きになるかもしれませんが、噛まれたタイミングで手を引っ込めることが、皮膚を割いてしまうなど、傷を大きくしてしまう原因になる場合も多いのです。愛猫が噛みつきを外すための行動として、頭に入れておいて良いかと思います。
これは子猫に対しても、しつけに代わる有効な手段となります。
噛むことをやめさせる方法を考える前に、「噛んでも、いいことなんてないよ」と教える意味で、噛まれたままの手を軽く押し込んでみることで、噛む行動が減った例もあります。
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