鼻ぺちゃちゃんで多い猫の短頭気道症候群について
原因
短頭種の猫たちは長年の品種改良により、鼻や喉がギュッと凝縮された構造になっています。そのため鼻の穴が小さく、鼻や喉における空気の通り道も狭くなってしまっています。このような猫では呼吸時に負荷がかかりやすく、呼吸がしにくい体の構造となってしまっています。
また生まれつきの特徴が原因で慢性的な呼吸負荷がかかることにより、喉の筋肉にも後天的な負荷がかかります。それによりさらに空気の通り道が狭くなり、さらに呼吸がしにくくなるという悪循環が起こってしまいます。このような二次的な変化は年を重ねるごとに悪化し治療も難しくなっていくため、症状に気づいたら早めに対処してあげることが重要です。
さらに、太っている子では脂肪により喉が圧迫されて余計に負荷がかかりやすくなると言われています。症状が出ている子はもちろん、症状がない子でも短頭種の子では適切な食餌・体重管理を心がけることが非常に重要です。
症状
短頭種気道症候群は生まれ持った身体的特徴が原因となっているため、若齢時から症状を示す場合があります。若いときに症状を示していなくても、後天的な変化により徐々に症状が目立ってくる場合もあります。
猫の短頭種気道症候群はあまり知られていない病気のため、飼い主さんの中には症状に気づけない方も多くいらっしゃいます。特に若いときから症状が出ている場合はそれがその猫ちゃんの普通の状態だと思ってしまいやすいため注意が必要です。
下記のようなものが短頭気道症候群の特徴的な症状となります。
・ブーブーと鼻詰まりのような音がする
・寝ているときにいびきをかく
・口を開けたまま寝ている
・口を開けて呼吸することがある
・激しい運動をしたり興奮したりすると呼吸が荒くなる
猫ちゃんは野生の本能が強く、わかりやすい症状を示さない場合もあります。呼吸が苦しそうなどの目に見える症状が出たときには重症化している可能性があります。少しでも異常を感じたら早めに動物病院を受診することをおすすめします。
また短頭種気道症候群の犬では熱をうまく外に逃すことができず、熱中症のリスクが高まることが知られています。猫の熱中症は犬ほど多くはありませんが、特に夏場は室温に注意が必要です。
診断
特徴的な症状や品種から診断がつくことが多い疾患です。睡眠時や興奮時しか症状を示さない場合もあるため、受診時には症状が出ているときの動画があると診断の助けになります。
ただしさまざまな形態異常が複合的に起こる疾患のため、病態を正確に把握するためには画像検査が必要です。一般的にはレントゲンにて喉や胸部に異常がないかチェックします。
設備の整った呼吸器専門の病院などではさらに詳細な検査を受けることができます。喉の動きにより症状が出たり出なかったりする場合には透視レントゲンという特殊な撮影方法で喉の動きを観察します。また鎮静・麻酔をかけて口の中をのぞいたり、内視鏡で喉や気管を観察することで診断します。
このような検査を行うことで猫ちゃんの身体に何が起こっているのかを正確に把握することができます。なかなか症状が改善しない場合や外科手術を検討している場合はこういった詳細な検査を行うことをおすすめします。
治療
生まれ持った身体の構造が原因のため、構造異常が重度の場合や根本的に治す場合には外科手術が必要ですが、内科療法で症状を緩和していく方法もあります。
内科療法では気道内の分泌物を抑える去痰剤や二次的な炎症を抑えて呼吸を楽にするためのステロイド剤などが使用されます。また興奮すると呼吸がしにくくなるため、緊急時に備えて鎮静剤が処方される場合もあります。
外科手術では、主に狭い鼻の穴を広げるために鼻の軟骨や周囲の皮膚を少し切り取る手術を行います。鼻の穴を広げるだけなら比較的簡単な手術なので、若齢時の去勢手術や避妊手術と同時に行われる場合もあります。
二次的な変化が起こり症状が重篤化しているようなケースでは、喉の奥の筋肉を一部切除するなど追加の処置が必要になる場合も多くあります。複雑な術式になるほど合併症も起こりやすくなるため、短頭種の猫ちゃんをお迎えされる方は早めの手術を検討されてもよいかもしれません。
ご自宅ではなるべく興奮させるようなイベントは避け、部屋が暑くならないように空調管理に気を付けることが重要です。体重が増えることで症状が顕在化する場合もあるので、適切な体重管理を心がけましょう。すでに太ってしまっている子ではまずはダイエットをおすすめします。また日頃から猫ちゃんの様子をよく観察し、いびきが増えたなど異常を感じることがあれば早めに動物病院へ相談しましょう。
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