猫ちゃんの呼吸がつらそうなときの原因と対応
猫ちゃんの正常な呼吸数
そもそも、正常な猫ちゃんの呼吸回数はどれくらいでしょうか。一般的に呼吸数とは、1分間当たりの呼吸の回数を意味します。リラックスしている時や、睡眠時の猫ちゃんの正常な呼吸回数は、一般的に15〜30回程度です。
ただし、この数値は猫ちゃんによって個体差があります。日頃から猫ちゃんをよく観察し、健康な時の呼吸回数を数えておくと、いざという時に参考になります。
呼吸数を数える時は、必ず猫ちゃんがリラックスして横たわっている時や、寝ている時にこっそりと測定します。一回の呼吸は、猫ちゃんの胸が膨らんでへこむ一連の動きを一回として数えます。1分間数え続けるのが難しい場合は、15秒間の呼吸数を数えて4倍しても問題ありません。
猫ちゃんの呼吸器の構造
猫ちゃんの呼吸器は、人間や他の哺乳類と同じように鼻、喉、気管、肺などから成り立っています。
・鼻:空気を取り込む際の最初の部分です。ここで空気は温められ、加湿され、塵や他の粒子が取り除かれます。
・喉:鼻から気管にかけての通り道です。食道と交差する場所であり、窒息を防ぐために重要な役割を果たします。
・気管:軟骨で覆われており、これにより気道が常に開いだ状態を保つことができます。気管を通った空気は肺へと運ばれます。
・肺:多くの小さな袋状の構造(肺胞)から成り立っており、ここで酸素と二酸化炭素の交換が行われます。酸素は血液に取り込まれ、全身に運ばれます。一方、二酸化炭素は体内で産生された廃物であり、これが息を吐き出すことによって体外へ排出されます。
呼吸器系は、空気中の酸素を体に取り込み、不要となった二酸化炭素を外へ排出するという重要な役割を果たしています。猫ちゃんが呼吸に問題を抱えている時は、この系統のどこかに問題が生じている可能性があります。
猫ちゃんの異常呼吸
苦しい時は、呼吸数だけでなく呼吸の方法にも異常が見られることがあります。安静時や睡眠時に以下のような呼吸が見られた場合、呼吸が苦しいと感じているかもしれません。
・肩で息をしている
・鼻の穴を大きく開いて呼吸している(鼻翼呼吸)
・口を開けて呼吸している(開口呼吸)
猫ちゃんは基本的には鼻で呼吸する動物です。わんちゃんのように口を開けてハァハァと息をしている時は呼吸が苦しい可能性が高いです。このような場合はすぐに動物病院に連絡することをおすすめします。
猫ちゃんの呼吸が速い時に考えられる疾患
ここでは猫ちゃんの呼吸が速い時に考えるべき代表的な疾患をご紹介します。
・猫上部気道感染症(猫カゼ)
特に若い猫ちゃんで問題となりやすい呼吸器疾患です。ヘルペスウイルスやカリシウイルス、その他の細菌感染などが複合的に起こることで、鼻水やくしゃみ、目やになどの症状を引き起こします。また発熱により食欲が低下し、特に幼い猫ちゃんでは命の危機に晒されることもあります。
鼻水が詰まって呼吸がしにくくなることで開口呼吸を起こしたり、重症化して肺炎を起こすことで呼吸の問題を引き起こします。
・ポリープや異物による閉塞
鼻や喉の内部に異物が詰まったり、ポリープや腫瘍などが発生することで空気の通り道が遮断され、呼吸のトラブルを引き起こすことがあります。特に若い猫ちゃんではポリープが、高齢の猫ちゃんでは腫瘍が発生しやすいことが知られています。
・猫喘息/慢性気管支炎
慢性的な気管支の炎症が原因で、咳などの症状を引き起こす疾患です。アレルギーなどが原因と言われていますが、はっきりとした原因は分かっていません。炎症でダメージを受けた気管支はウイルスや細菌などの感染に弱いため、二次感染を生じて病態が悪化することもあります。
咳が特徴的な症状であり、突然咳き込んで苦しそうな様子が見られることがあります。肺炎を合併することで呼吸困難に陥り、命の危機に陥ることもあります。
・心臓病
心臓病により血液の循環が悪くなると、肺や胸腔内に体液が貯留し、呼吸器のトラブルを引き起こすことがあります。肺胞内に液体が溜まった状態を「肺水腫」と呼びます。肺水腫を発症すると、肺胞で酸素を取り込むことができなくなり、呼吸困難に陥ります。また胸腔内に溜まった液体を「胸水」と呼びます。胸水が著しく貯留すると、肺が空気で膨らむのを妨げ、呼吸がしにくくなります。
その他の原因
呼吸器や心臓に問題がない場合でも、さまざまな原因で猫ちゃんの呼吸が速くなることがあります。以下にその一部をご紹介します。
・運動
人間や他の動物と同じように、猫ちゃんも運動により呼吸が速くなります。通常はしばらく休むことで徐々に落ち着いてきます。
・体温調節
わんちゃんや猫ちゃんは人間と違って汗をかいて体温を下げるといった仕組みがありません。その代わりに、呼吸により体温調節を行います。猫ちゃんはわんちゃんのように舌を出して呼吸することはなく、呼吸を速くして体温を下げようとします。
・ストレス
不安や恐怖、緊張などのストレスにより交感神経が刺激され、呼吸が速くなることがあります。また興奮状態でも呼吸が速くなる場合があります。
・痛み
外傷や骨折などの痛みにより呼吸が速くなることがあります。
猫の呼吸が荒い時の対処法
呼吸器のトラブルは命に直結する問題です。安静時や睡眠時に呼吸が速い様子が見られたり、口を開けて苦しそうに呼吸している様子が見られた場合は、すぐに動物病院に相談するようにしましょう。
強いストレスがかかっている場合や興奮時など、明らかな原因が分かっている場合は猫ちゃんが落ち着くまで様子を見ても問題ありません。しかし、なかなか正常な呼吸に戻らない場合や、判断に迷う場合、まずは動物病院に相談することをおすすめします。
動物病院へ向かう際、急な移動で猫ちゃんを興奮させてしまうと、呼吸のさらなる悪化を招くおそれがあります。日頃からキャリーバッグに慣れさせておくといざという時に安心です。
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