心臓病の犬と散歩するときに注意したい症状や対策
心臓の役割とは?
心臓は、酸素をたくさん含んだ血液を全身に送り出すポンプのような役割をしています。心臓病になってしまうと、心臓のポンプの役割がうまく機能しなくなってしまう場合があります。その場合、散歩などの軽い運動でも心臓に負担がかかってしまうため、後述する注意や対策が必要になります。心臓病の代表例としては、僧帽弁閉鎖不全症、拡張型心筋症などがあります。
・僧帽弁閉鎖不全症
「僧帽弁」という心臓の左心室と左心房の間にある弁の機能が弱くなることで生じる病態です。僧帽弁がしっかり機能しないことによって左心室から血液が逆流し、酸素を豊富に含んだ血液は全身にうまく運ばれなくなってしまいます。
・拡張型心筋症
心臓の筋肉がなんらかの原因によって薄くなることで、心臓がうまく機能しなくなってしまう病態です。一方で、心臓の筋肉がなんらかの原因によって厚くなることで、心臓がうまく機能しなくなってしまう「肥大性心筋症」も存在します。
散歩中に注意したい症状
散歩中、次のような症状が見られる場合は、特に注意が必要です。
・疲れやすい
頻繁に立ち止まったり、歩行距離が短くなったり、抱っこをせがむようになった場合は、心臓の機能低下による影響で疲れやすくなっている可能性があります。このような行動は、加齢や性格によっても表れるため、見過ごしやすいです。日ごろから注意して観察しましょう。
・呼吸数の増加
心臓のポンプ機能が低下することによって、酸素を多く含んだ血液が全身にうまく送られなくなると、体から「酸素が足りない」と脳に指令がいきます。その結果、酸素をとりこもうとして呼吸数が増加します。多すぎる呼吸数は呼吸困難を引き起こす恐れがあります。散歩中、呼吸数が普段より増えすぎていないか、一定の間隔で確認するようにしましょう。
・咳
「カフカフ」「ゲッゲッ」「ゼーゼー」など、咳の症状がみられた場合は特に注意が必要です。心臓病によって咳が引き起こされている可能性があるためです。心臓のポンプ機能が低下すると、心臓内に血液が溜まりやすくなります。血液が溜まった心臓は通常よりも大きくなり、気管を圧迫します。その結果、咳が誘発されます。咳によって呼吸も苦しくなるため、散歩は中断して帰宅することをおすすめします。頻繁に咳が出る場合は、獣医師に相談しましょう。
散歩の対策
心臓病の犬との散歩を心配に感じる方もいらっしゃるかと思います。しかし、心配のあまり散歩を控えてしまうと、犬は気分転換が難しくなってしまいます。飼い主とのコミュニケーションの場である散歩が行われなくなることで、不安やストレスを抱えてしまう場合もあるでしょう。下記のような対策をとり、無理をさせないことで、今後も散歩を続けられることがあります。
・休憩をとる
一定の距離、あるいは一定の時間毎に休憩時間をとることで、無理なく散歩を行う方法です。休憩の時間だということを犬にわかってもらいやすくするため、立ち止まったり座ったりするとよいでしょう。水を与えることも有効です。
・運動量を減らす
散歩する距離を減らすことによって運動量を減らし、心臓の負担を軽減する方法です。また階段や急な坂道も心臓の負担になるので、できるだけ避けましょう。
・ゆっくりと歩く
ゆっくりと歩くことで心臓への負担を軽減できます。走ったり早く歩いたりすることは、心臓に負担がかかるため、避けましょう。
・時間を変える
心臓病をもつ犬にとって、気温は重要なポイントです。暑い時の散歩は心臓に負担がかかります。そのため、暑い時期は朝や夕方などの比較的涼しい時間帯に散歩しましょう。熱中症の予防にもなります。また、心臓病は気温差も影響します。室内犬の場合は、室内気温と室内気温の差が最も少ないときを選んで散歩するとよいでしょう。
・興奮させない
興奮すると心拍数が上昇するため、心臓に負担がかかってしまいます。さらに、呼吸数も上がりやすくなります。そのため、なるべく興奮させないように注意しましょう。特にドッグランは他の犬がいたり、ノーリード可であるなどの条件から興奮しやすいので、あまり慣れていない場合は避けたほうがよい場所です。
・ペットカートに乗せる
病状が進行し、運動の負担はかけられないけど気分転換はさせてあげたい、という場合はペットカートに乗せて散歩するというのも一つの方法です。ペットカートの多くはカバーがついているので、日差しを遮ることができ、熱中症の対策にもなります。
心臓病の症状によっては、上記以外の対策を行ったほうがよい場合もあります。「無理をさせない」散歩方法を見つけるために、獣医師に相談することもおすすめです。
犬にとっての幸せは、飼い主が幸せであることです。飼い主に心配や不安を感じさせないために、症状を我慢して隠してしまう場合もあります。そのため、症状が出てしまった場合は「大丈夫?」「つらい?」等の心配を表す言葉掛けではなく、「がんばったね」「散歩楽しかったね」等の前向きな言葉がけを心がけましょう。前向きな言葉がけにより犬は安心し、症状を隠さなくなります。症状が確認しやすくなることで、対策や相談がしやすくなります。
<おすすめ動画>
<関連記事>
愛犬の脳に刺激のある散歩をしよう脳に刺激のある散歩ってなに? 散歩なんて適当でいいんじゃないの? そんな風に思っているあなた! 散歩って大事なのです。
<関連記事>
夏場の散歩で知っておくべき危険と対策 ~ダックスフンド~温度も高く日差しも厳しい夏の散歩にはたくさんの危険があります。ダックスフンドを飼っている、これから飼おうと思っているみなさんに知っておいてほしい、夏場の散歩の危険とその対策についてご紹介します。愛犬の健康と命を守るために、しっかり知っておきましょう!
<関連記事>